日銀のマイナス金利政策が、解除された。「金利が、上昇するのではないか?」「今のうちに、変動金利から固定金利に借り換えるべき?」と不安を感じている方が少なくないだろう。
借り換える際に着目したいのが、借り換え前とあとの金利差だ。今後金利が上昇するのであれば、たしかに今が「借り替えどき」と言える。このタイミングで借り換えについて学ぶ意義は大きいだろう。
本稿では「住宅ローンの借り換えで得する条件」をご紹介する。借り換えをご検討中の方に、しっかり押さえておいて欲しい知識だ。ぜひ、最後までご覧いただきたい。
住宅ローンの借り換えで得する条件とは
ご存じのとおり「住宅ローンを借り換えれば、必ずお得になる」とは限らない。なぜなら、借り換えの際にさまざまな諸費用がかかるからだ。
諸費用を自己資金でまかなうとすると、以下の式が成り立たないと、借り換えても「お得」にならない。
借り換え前の返済総額 > 借り換え後の返済総額+借り換えの諸費用額
まず、借り換え後の返済総額が、借り換え前の返済総額より下がる必要がある。さらに、節約できた返済額が、借り換えにより発生する諸費用額を上回らなければならない。
上述の式が成り立つかどうかは、住宅ローンの残債や残期間の状況を確認して、個別にシミュレーションする必要がある。
本稿では、借り換えメリットが出やすいと言われる目安を紹介する。全てに当てはまる必要はないので、どれかに当てはまったら、前向きに借り換えを検討していただくとよいだろう。
借り換え前と借り換え後で、金利差が1%以上ある
借り換えることで金利を1%以上下げられる方は、現在、余分な利息をたくさん支払い続けている。できるだけ早く、具体的な検討を進めるべきだろう。
繰り返しになるが、借り換えで大切なのは「借り換え後の返済総額が、借り換え前の返済総額より下がる」ことだ。よって「借り換え後の金利をどれだけ低くできるか」が重要になる。
当然、借り換え前後の金利差が大きいほど、借り換えメリットも大きくなる。
とは言え「金利差が1%以上ないと借り換えメリットがなくなる」ということではない。
金利差を1%以上確保できない場合は「借り換えで実現できる利息軽減額」と「借り換えで必要になる諸費用額」をてんびんにかけて、お得かどうか判断すればいい。
残債額が1000万円以上、残返済期間が10年以上ある
住宅ローンの残債額と残返済期間も、借り換えで得られる利息軽減効果に影響を与える。借り換えで得する目安は「残債額が1000万円以上、残返済期間が10年以上」だ。
これくらいの残債額と返済期間が残っていないと、借り換えメリットが出にくい。借換による利息軽減額より、借り換える際の諸費用額が上回りやすいのだ。
しかし、この条件も絶対というわけではない。返済残高と返済期間があまり残っていない方は、入念にシミュレーションしてみて欲しい。借り換えでお得になるケースもあるだろう。
住宅ローンを借り換えで、どんな「得する」ことがあるのか
さて、そもそも住宅ローンを借り換えると、どんな「得すること」があるのだろうか?代表的な借り換えメリットを、5つご紹介しよう。
- 月々の返済額を軽減できる
- 返済総額を減額できる
- 返済期間や金利タイプを見直せる
- 団体信用生命保険を強化できる
- リフォームローンも合算できる
順番に、詳しく解説しよう。
メリット1:月々の返済額を軽減できる
住宅ローンの借り換えで得られる最たるメリットと言えば、月々の返済額を下げられることだろう。金利が1.5%から0.5%に下がったと想定して、ふたつの例で確認してみよう。
なお、比較しやすくするため、完済まで金利が一定で推移したと仮定してシミュレーションしてみる。
条件1:残債額1000万円、残返済期間10年、元利均等返済の場合
- 借り換え前 (金利 1.5%):毎月の返済額 89,791円
- 借り換え後 (金利 0.5%):毎月の返済額 85,451円
この条件では、毎月の返済額の軽減効果は「-4,340円」となる。
条件2:残債額2000万円、残返済期間20年、元利均等返済の場合
- 借り換え前 (金利 1.5%):毎月の返済額 96,509円
- 借り換え後 (金利 0.5%):毎月の返済額 87,586円
この条件では、毎月の返済額の軽減効果は「-8,923円」となる。
メリット2:返済総額を減額できる
毎月の返済額が減れば、返済総額も減る。こちらも、ふたつの例で確認してみよう。
条件1:残債額1000万円、残返済期間10年、元利均等返済の場合
- 借り換え前 (金利 1.5%):残りの返済総額 10,774,922円
- 借り換え後 (金利 0.5%):残りの返済総額 10,254,109円
この条件では、返済総額の軽減効果は「-520,813円」となる。
条件2:残債額2000万円、残返済期間20年、元利均等返済の場合
- 借り換え前 (金利 1.5%):残りの返済総額 23,162,045円
- 借り換え後 (金利 0.5%):残りの返済総額 21,020,706円
この条件では、返済総額の軽減効果は「-2,141,339円」となる。
メリット3:返済期間や金利タイプを見直せる
「借り換え」とは、新しく契約する住宅ローンを使って、現在の住宅ローンを完済する行為だ。よって、新たに住宅ローンを契約する際に、返済期間を短くしたり金利タイプを変更したりできる。
たとえば、こんな感じだ。
できるだけ利息の負担を減らしたい方 | 返済期間を短縮して、固定金利から変動金利に変更 |
---|---|
変動金利の金利上昇リスクが心配な方 | 返済期間はそのままで、変動金利から固定金利に変更 |
中には、返済期間を長くできる住宅ローンもある。たとえば、SBI新生銀行は借入期間の延長が可能だ。借入期間を延ばせば、団体信用生命保険の加入期間も延ばせる。
一方、借入期間を延長すると返済総額が増加する。よって、返済期間を延ばす際は、ちゃんと借り換えメリットが出るかシミュレーションしてから実行したい。
メリット4:団体信用生命保険(団信)を強化できる
借り換えの際、団体信用生命保険を強化できるかもしれない。
近年、金融機関の住宅ローン獲得競争が激化している。金利だけでは差を付けにくいので、団信の保障内容を手厚くし始めた金融機関が少なくない。
契約者がお亡くなりになったときだけでなく、がんや特定の疾病に対しても保障も付けている団信が増えた。借り換えることで、以前はなかった好条件の団信に加入できる可能性がある。
ただし、団信は保障内容によって金利を上乗せされる場合がある。年齢や健康状態によって希望の団信に加入できないケースもあるので、よく確認しておきたい。
メリット5:リフォームローンも合算できる
金融機関の中には、借り換える住宅ローンにリフォーム資金も加えて申し込めるところがある。
たとえばSBI新生銀行は、住宅ローンの借り換えとリフォームローンの借り入れを同時におこなうことで、リフォーム資金も住宅ローンの条件で借りることができる。
通常、リフォーム資金は貯蓄を使うかリフォームローンを利用するのが一般的である。なぜなら、多くの住宅ローンは、使途を「建築・購入・増築・改築 (建て替え)」に限定しているからだ。
しかし、リフォームローンは住宅ローンと比べて不利な点が多い。例をあげてみよう。
- 住宅ローンより借入金額の上限が低い
- 住宅ローンより最長返済期間が短い
- 住宅ローンより金利が高い
- 団体信用生命保険が付いていない商品もある
もしも、リフォーム資金を住宅ローンと同条件で借りられるなら、リフォームローンで資金を調達するよりダンゼンお得だ。
大型リフォームの時期に差しかかっている方は、借り換えをうまく活用してみてはどうだろうか。
住宅ローンを借り換えても、お得にならないケースとは
住宅ローンのメリットを5つご紹介した。その中でも有力な「月々の返済額の軽減」と「返済総額の減額」については、住宅ローンの借り換え条件しだいでお得にならないケースもある。
注意が必要なケースを、ふたつご紹介しよう。
利息の軽減効果が薄い場合
借り換えてもあまり金利が下がらない、あるいは残債や残りの返済期間が少ない場合は注意が必要だ。利息の軽減効果が、薄くなってしまう。
一方、先述のとおり借り換えには諸費用がかかる。借入額等によって変わるが、目安は30~80万円くらいだ。これを自己資金で支払うか、借り換える住宅ローンに上乗せして返済する。
よって、借り換えにより節約できる利息を諸費用額、または上乗せによる利息の増加額が上回る場合は、借り換える意味があるのか再検討する必要があろう。
変動金利から固定金利への借り換えるメリットは、金利が上昇局面に入っても安心していられることだろう。一方デメリットは、利息の節約ができないどころか増える可能性があることだ。
現在、マイナス金利政策が解除されたことで「金利が上がるのでは?」と不安になっている方が多い。しかし、専門家のあいだでは「変動金利は、まだしばらく据え置きになりそう」との見方が強い。
中には金利を下げている金融機関もあるくらいだ。
マイナス金利が解除(利上げ)されたといっても、0.1%であり、今のところ影響は軽微だ。市場金利の上昇要因より、むしろ銀行間の競争の影響力のほうが強く、上述のような現象が起きている。
変動金利から固定金利に変更すると、月々の返済額が上がるだろう。今の状況なら、変動金利のままにしておき、固定金利との差額分を繰り上げ返済や投資に回すほうが得策かもしれない。
将来のことは、どうなるか分からない。だからこそ、可能な限り情報を集め、自分なりにさまざまなパターンをシミュレーションしたうえで借り換え方法を検討したいところだ。
団体信用生命保険の保障が大幅に悪くなる場合
住宅ローンの選定基準で金利の次に大事なもの ―― と言えば「団信」ではないだろうか?借り換えで団信の保障が大幅に悪くなる場合は、慎重に借り換えの検討を進めるべきだろう。
たとえば、がん団信や疾病保障付き団信等、一定の年齢を超えると加入できない団信がある。現在このような団信に加入していて、かつ高齢になっている方は、借り換え後の保障内容を確認しておこう。
年齢と現在の団信の保障内容によっては、借り換える際に団信がグレードダウンする。そうなると、金利を削減できたとしても、手放しで「得した!」と喜べない。
借り換えによる利息の削減額しだいでは、借り換えないほうが得策かもしれない。とりわけ団信をがんや疾病の保障として活用している方は、現状の保障をキープできるかよく確認しておこう。。
お得に住宅ローンを借り換えるために試したいこと
最後に、お得に住宅ローンを借り換えるために試したいことをふたつご紹介しよう。
借り換えで得するかシミュレーションする
借り換えでお得になるかどうかは、ケースバイケースだ。借り換えを検討し始めたら、早い段階でシミュレーションしてみるとよい。
では、具体的にどうやってシミュレーションすればいいだろうか?―― いくつか候補があるので、あげておこう。
- 借り換え先の金融機関に依頼する
- ファイナンシャルプランナーに依頼する
- 住宅ローンの比較サービスを使う
第1候補は、借り換え先の金融機関を決めてシミュレーションしてもら方法だろう。
第三者がよければ、ファイナンシャルプランナーにシミュレーションしてもらう方法がある。昨今、無料で相談できるサービスもあるので、うまく活用するとよいだろう。
もっと簡単な方法から試したい方には、住宅ローンの比較サービスがおすすめだ。すでに15万人以上が活用している「モゲチェック」なら、5分程度の入力だけで以下の情報を受け取れる。
- 借り換えで減らせる利息額のシミュレーション
- お得に借り換えるためのアドバイス
- おすすめの銀行の提案
- 審査の通過率
モゲチェックなら、審査の通過率も推定してくれるので「せっかく申し込んだのに、審査に落ちた」というリスクが少ない。気に入った銀行が見つかれば、仮審査の申し込みもできる。
不明なことがあれば、アドバイザーにチャットで質問や相談もできるので安心だ。時間と手間と利息を節約したい方は、まずモゲチェックから試してみるとよいだろう。
詳しくは、こちらをご覧いただきたい。
モゲチェック《借り換え》の評判と口コミ、使って分かったデメリット
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借り換え先の承認を得てから、借り換え元と交渉する
借り換えをご検討中の方には、借り換え以外にもう一枚カードを持って欲しい。「借り換え元と交渉」カードだ。
繰り返しになるが、借り換えにはいくつかデメリットがある。例をあげてみよう。
- 必要書類を準備しなければならない
- 審査に申し込み、承認を得る必要がある
- 諸費用がかかる
ではもし、現在返済中の金融機関で金利を下げてもらえたら、どうだろうか。―― まず、手間がほとんど要らなくなる。審査も不要だ。お金も、ほとんどかからない。
表にまとめておこう。
手間 | 必要書類は1~2枚程度。中にはインターネットを使ったやり取りだけで、金利引き下げまで完結できる銀行もある。 |
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審査 | 審査なし。交渉で合意を得られたら、事務的な作業で取引中の金利を引き下げてもらうだけ。 |
お金 | 必要な諸費用は、印紙代と金利条件の変更手数料くらい。交渉しだいで、手数料も免除してもらえるケースもある。 |
現在融資を受けている金融機関に金利を引き下げてもらえたら、借り換え並みか、それ以上のメリットがある。交渉してみる価値は、大きいだろう。
借り換え予定の金融機関から提案書をもらったら、それを現在融資を受けている金融機関に持っていき「借り換えて欲しいと言われている」と切り出してみよう。
現在、新規で住宅ローンを獲得するのは、とても大変である。よって、あなたが「手放したくない顧客」であれば、その金融機関は金利を引き下げて引き留めてくれるだろう。
借り換えてもよし、金利引き下げ交渉をしてもよし。複数のカードを持って、あなたにとって最適な切り札を切ってはどうだろうか。
まとめ:住宅ローンの借り換えで得する条件
さいごに、本稿のおさらいをしておこう。
住宅ローンの借り換えで得する条件とは?
借り換え後の返済総額が、借り換え前の返済総額より下がること。そして、節約できた返済額が、借り換えにより発生する諸費用額を上回ることが必要だ。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
住宅ローンを借り換えても、お得にならないケースはある?
借り換え前後で金利があまり下がらない場合や、残債額が少ない場合、残りの返済期間が短い場合は借り換えてもお得になりにくい。詳しくはこちらをご覧いただきたい。