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住宅ローン節約

団信視点:住宅ローンを繰り上げ返済しないメリットとデメリット

ホリカワ
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住宅専門ライターのホリカワです。住宅ローンの仕組みや特徴をわかりやすく解説します。

団体信用生命保険(団信)は、万が一の際に住宅ローンの返済を免除してくれる大切な保険だ。繰り上げ返済をしない選択をすることで、家族の生活を守る手段として最大限に働く場合がある。

しかし、金利上昇や返済期間の長期化といったリスクも同時に抱えることになる。団信視点で繰り上げ返済を考えると、実行すべきか悩むところだろう。あなたも、迷っていないだろうか?

本稿では、団信の詳細と繰り上げ返済をしない場合のメリット・デメリットについて詳しく解説する。あなたとご家族が経済的な安心を確保するための《ヒント》になれば幸いだ。

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団信視点で考える、住宅ローンを繰り上げ返済しないメリットとは

「住宅ローンは早く返すべき」と考える方が少なくないが、じつは繰り上げ返済にはデメリットもある。とくに、団体信用生命保険(以下、団信)の観点から考えると、その影響は無視できない。

では、繰り上げ返済を実行すると、団信にどのような不利が生じるのだろうか?

繰り上げ返済で失う、団信のメリットとは

住宅ローンの契約者が基本的な団信に加入している場合、死亡または高度障害状態になったとき、残っている住宅ローンを保険金で完済できる。

がん団信に加入している方なら、死亡と高度障害に加え、がんに罹患りかんしたときも以後の返済負担を減らせる。このように、団信は万が一のときに家族を守ってくれる仕組みの保険なのだ。

では、繰り上げ返済を実行すると、団信に対してどのような影響があるのだろうか?―― 繰り上げ返済を実行すると、以下のような影響が生じる。

  • 返済残高が減少する ⇒ 団信の保険金も減少する
  • 返済期間が短くなる ⇒ 団信の保障期間も短くなる

たとえば、繰り上げ返済を実行したあと、契約者の死亡等により団信の保険金が支払われたとしよう。恐らく、残されたご家族は「繰り上げ返済をした意味がなかった」と感じるだろう。

一所懸命に繰り上げ返済をして、住宅ローンを完済した途端、契約者がお亡くなりになったとしたらどうだろうか?きっと、ご家族は複雑な気分になるだろう。

ホリカワ
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いずれもタラレバの話ですが、そういうリスクがある、ということは頭の片隅に置いておきたいところです。

がんや疾病による死亡リスクは、一般的に年齢とともに上がる。同じ《返済期間35年》の住宅ローンでも、借入時の年齢が30歳の人と40歳の人では、団信を使う可能性が異なる。

前者は、約定どおりに返済すると64歳で完済できる。それなら団信のお世話になる可能性は低く、早々に繰り上げ返済を実行するのもありだろう。利息や金利上昇リスクを軽減できる。

一方、後者は約定どおりに返済すると74歳で完済することになる。60歳以上からがんで死亡する人が増え始めることを考えると、団信の保障を残しておくほうがよいかもしれない。

団信(団体信用生命保険)とは

読者の中には、これから住宅ローンを借りるご予定で、下調べをされている方がおられるかもしれない。そんな方に向けて、団信の特徴を解説しておこう。

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すでに返済中の方も、復習のつもりでご覧ください。

住宅ローンの契約者は、一家の稼ぎ頭であるご家庭が多いだろう。契約者に万が一のことがあれば、残されたご家族が苦労されることは容易に想像がつく。そこで登場するのが、団信だ。

団信とは、金融機関が契約者にかける《掛け捨て型の逓減定期保険》のこと。万が一、契約者が死亡もしくは高度障害になったとき、金融機関に保険金が支給される。

支払われた保険金は返済に充当され、住宅ローンは完済もしくは減額される。残されたご家族は、マイホームを失うことなくそのまま住み続けられる。これが団信の大きな意義だ。

ホリカワ
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賃貸住宅と大きく違う点のひとつですね。

民間の金融機関では、団信の加入が融資の要件になっている。通常、団信の保険料は金利に含まれており、別途負担する必要はない。

なぜなら、団信の保険契約者兼保険金受取人が金融機関だからだ。保険料は、住宅ローン利用者に転嫁するために金利に含める形になっている。

フラット35は、団信の加入を融資の用件にしていない。団信の加入を外す場合は「借入金利-0.2%」となる。

ホリカワ
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年齢ごとの死亡率は、男性/女性、配偶者がいる/いない、などの条件しだいでずいぶん違います。チェックしておくと、判断材料になりますよ。

自分が加入している団信の種類を知っておこう

団信には、さまざまな種類がある。繰り上げ返済を検討している方は、ご自身がどんな団信に加入しているのか知っておこう。繰り上げ返済を「する/しない」の判断材料になる。

基本的な団信は《一般団信》と呼ばれる。一般団信と保障内容は同じだが、加入条件が緩和されているものを《ワイド団信》あるいは《引受条件緩和型団信》と言う。

民間の住宅ローンは、この一般団信かワイド団信に加入しないと利用できない。

一般団信契約者が死亡または高度障害状態となったときに、残った住宅ローンの返済を肩代わりしてくれる。保険料は金利に含まれているため、基本的に契約者の負担はない。
ワイド団信引受基準が緩和されているため、一般団信に加入できない健康状態の方でも加入できる可能性がある。加入する場合は、一般的に《0.2~0.3%》程度の金利が上乗せされる。

上述の基本の団信に、疾病しっぺい保障をプラスした団信もある。おもなものを記載しておこう。

  • がん団信
  • 3大疾病保障付団信
  • 8大疾病保障付団信
  • 11疾病保障付団信
  • 全疾病保障付団信

さて、上述の保障は数が多いほど手厚いように思える。しかし、それほど単純でもない。

たとえば「11疾病」では、「3大疾病」や「8大疾病」には含まれている《脳卒中》や《急性心筋梗塞》が外されているケースがある。「全疾病」では、さらに《がん》も入っていないものがある。

また、疾病保障は1年程度《就労不能》にならないとローン残高をゼロにしてくれないものが多い。はたして、そのような状態になる確率がどの程度なのか、よく考える必要があるだろう。

団信を使う確率が低いようなら「繰り上げ返済をするほうがよいのでは?」と仮説を立てられる。

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がんは、ステージ1であっても、がんと診断されると保険金が出ます。

もうひとつ、クロスサポート(連生団体信用生命保険付住宅ローン)にも触れておこう。

クロスサポートは、ご夫婦(連帯債務でローンを借り入れた主債務者と連帯債務者)のどちらかが死亡または高度障害となった場合に、ローン残高が0円になる住宅ローン商品だ。

クロスサポートを利用されている場合は、契約者だけでなく配偶者がお亡くなりになる可能性も考慮して、繰り上げ返済の可否を判断する必要がある。

なお、親子リレーローンの団信の場合は子しか加入できない、あるいは親が加入できる場合でも規定の年齢を超えると被保険者が子になるものがある。

親が被保険者だと思い込んでいると繰り上げ返済のタイミングを誤るので、注意が必要だ。

借り換えるなら、団信の加入条件も知っておこう

団信をキープしたまま、利息を減らす方法がある。借り換えだ。今より金利が低い他行に借り換えると、場合によっては団信の保障を強化しつつ、利息を減らせる可能性がある。

借り換える場合、団信は借り換え先の金融機関で新たに加入し直す必要がある。だから、今より保障の手厚い団信に加入することもできる ―― という寸法だ。

ホリカワ
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団信に加入できるのは、住宅ローンの契約時のみです。一度契約した団信の保障内容は変更できず、特約の追加もできません。

ただし、団信には加入条件がある。一般団信はもちろん、ワイド団信であっても健康状態が基準を満たしていなければならない。ウソをついて加入することもできない。

団信は、よくある生命保険と同じく、加入時に健康状態を告知し審査で承認を得て加入する。事実と異なる告知をすれば、告知義務違反で、万が一のときに保険金が支払われないおそれがある。

健康状態が悪くなっていると、団信に加入できない。つまり、住宅ローンを借り換えられないということだ。

ホリカワ
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「住宅ローンは若いほうが有利」と言われる理由のひとつです。

また疾病保障については、多くの場合、加入年齢や返済完了時の年齢に制限が設けられている。借り換えで利息を削減したいなら、若いうちに実行したい。

借り換えについては、以下の記事で詳しく解説している。ご興味がある方は、あわせてご覧いただきたい。

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住宅ローンを繰り上げ返済しない場合のデメリットやリスクとは

つづいて、住宅ローンを繰り上げ返済しない場合のデメリットをご紹介しよう。

団信を重視して「繰り上げ返済をしない」と判断した場合、どのようなリスクがあるのだろうか?

金利上昇リスクを軽減できない(おもに変動金利型)

繰り上げ返済を見送ると、金利上昇リスクを軽減できない。とりわけ、変動金利型の住宅ローンを利用している方には、この影響がより顕著に現われるだろう。

変動金利型の住宅ローンは、金利が上昇すると返済額が増える。元金が多いほど上昇額が大きくなるため、返済初期ほど金利上昇のリスクが大きい。

繰り上げ返済によって元金を減らせば、金利上昇時の月々の返済額の増加を抑えられる。この効果も、元金の多い「返済初期」ほど大きくなる。

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低金利は、いつまで続くか分かりません。少しでも、借入残高を減らしておきたいですね。

固定金利型で借りている方でも、期間選択型を選んでいるなら繰り上げ返済が役に立つ。繰り上げ返済によって、固定期間終了後の金利上昇リスクを軽減できる。

繰り上げ返済は、将来の金利上昇に備える有効な手段だ。借入残高を減らすことで、金利変動の影響を減らし、家計の安定性を高められる。

利息軽減効果や返済期間短縮効果を享受できない

繰り上げ返済を見送ると、利息軽減効果や返済期間短縮効果を享受できない。

繰り上げ返済をおこなうと、以下の《二重の削減効果》が働く。

  • 直接的に元金が減る(返済残高が減る)
  • 間接的に利息も減る(返済総額が減る)

「元金が減る」ことの恩恵は、以下のふたつの方法から選んで享受できる。

  • 返済期間を短縮する方法(期間短縮型)
  • 毎月の返済額を減額する方法(返済額軽減型)

繰り上げ返済の効果の一例を見てみよう。以下を借入の条件とする。

  • 借入額:3000万円
  • 金利 (固定):1.3%
  • 返済期間:35年
  • 返済方法:元利均等返済
  • ボーナス返済:なし

この条件で、10年目に「資金300万円」を「期間短縮型」で繰り上げ返済すると、どうなるだろうか?―― なんと、返済総額が《1,097,370円》減る。返済期間も《3年10か月》短縮される。

繰上返済をして住宅ローンの利息と返済期間を軽減することは、老後の生活費対策になり得る。団信を取るか、繰り上げ返済を取るか、しっかり見極めたい。

団信重視で、繰り上げ返済をしない場合の注意点

団信重視で繰り上げ返済をしない、というのも選択肢のひとつだろう。とりわけ、高めの年齢で住宅ローンを借りた方は、団信が大きな安心材料になり得る。

しかし先述のとおり、繰り上げ返済を見送ると、利息や返済期間そして金利上昇リスクを軽減できないデメリットがある。このデメリットを少しでも緩和するには、どうすればいいのだろうか?

ライフプランを見直しておこう

繰り上げ返済をせず、約定どおりの返済を続けるのであれば、いま一度ライフプランをチェックしておきたい。

今後の家計も、見える化しておこう。とりわけ人生後半のライフイベントや老後の生活資金に注意して、懸念があるようなら改善策を講じておくべきだろう。

ライフプランニングや家計の見える化は、ファイナンシャルプランナーに依頼して手伝ってもらうといいだろう。ライフイベントと金融資産の推移を表にしてもらおう。

今は、ファイナンシャルプランナーとマッチングしてくれるサービスもあり、探しやすくなっている。試してみるといいだろう。

金利の動向にアンテナを張っておこう

変動金利型の住宅ローンを選んでいる方は、金利の動向にアンテナを張っておきたい。日銀の短期政策に耳を傾けよう。

短期政策に影響を与える指標にも注目しよう。たとえば、以下だ。

  • 物価・賃金・消費の動向
  • 原油高(物価に影響)
  • 為替レート(物価に影響)
  • 中小企業の賃上げ(賃金や消費動向に影響)

「物価・賃金・消費」が上昇すれば、日銀は金利を上げてくるだろう。しかし、現状では物価や一部の賃金が上昇しているものの、実質賃金は下がっている。消費も弱い。

植田総裁も当面の政策について「緩和的」と述べていて、利上げに慎重な姿勢だ。よって、追加利上げがあったとしても急速に上昇していく可能性は低い、と言うのが大方の見方である。

だからこそ、変動金利型を選んでいる方は、金利動向に注意したい。金利がゆっくり上がると、変化に気づきにくい。定期的に金利動向を確認し、必要に応じて手を打つことが大切だ。

繰り上げ返済の原資を持っておこう

「本格的に金利が上がっていきそうだな」と感じたら、繰り上げ返済でリスクを抑えたいと考えるだろう。そのときに原資がないと、繰り上げ返済を封じられてします。

もしものときにすぐに動けるように、手元流動性(緊急時の資金)を高めておこう。もっとも手元流動性が高いのは、現金や普通預金だ。

投資成績に自信があるなら、市場ですぐに換金できる株式投資や投資信託で運用するのもありだろう。ただし、元手を減らすリスクがある点は、よく理解しておく必要がある。

借り換えを検討しよう

金利が上昇局面に入りそうなときは、借り換えを検討するのによいタイミングだ。借り換えは実行前後の金利差が大きいほどメリットがあるため、金利が上昇し出すと不利になるのだ。

ただし、借り換えには数十万円、あるいはそれ以上のコストがかかる。条件しだいでは借り換えることで損してしまうケースもあるので、シミュレーションが必須だ。

シミュレーションは、モゲチェック等のシミュレーターが便利だ。借り換えによる節約額だけでなく、あなたにおすすめの金融機関もリストアップしてくれる。試しておこう。

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モゲチェックについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
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まとめ:団信視点で考える、住宅ローンを繰り上げ返済しない理由

さいごに、本稿のおさらいをしておこう。

繰り上げ返済をすると団信にとって不利に働く?

うがった見方をすると、繰り上げ返済はお金を出して保険金や保険期間を減少させる行為だ。繰り上げ返済後に契約者が亡くなると、後悔する家族もいるだろう。詳しくはこちらをご覧いただきたい。

団信視点で考える、住宅ローンを繰り上げ返済しないメリットとは

団信重視で繰り上げ返済をしない場合の注意点は?

念のため、繰り上げ返済の原資を確保しておこう。金利動向にアンテナを張っておき、必要に応じてすぐに動けるようにしておこう。借り換えも有効だ。詳しくはこちらをご覧いただきたい。

団信重視で、繰り上げ返済をしない場合の注意点

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ホリカワ ダット

主に住宅分野を専門とするブロガー・SEOライター。インテリアコーディネーター1級カラーコディネーター (商品色彩) の資格保有。ランサーズ認定・不動産ライタースペシャリスト。「家探し」や「家づくり」のノウハウを、わかりやすく解説します。

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