
ハイノキは、その優雅な姿から多くの人を魅了する人気の庭木だ。しかし「シンボルツリーにすると後悔する」という声も少なくない。なぜ、ハイノキが後悔の対象になるのだろうか?
じつは、ハイノキは成長が遅く、期待する大きさになるまで時間がかかる。枯れやすさや購入コストも、無視できない。そのため「ソヨゴかシマトネリコにすればよかった」となりがちなのだ。
本稿では、ハイノキをシンボルツリーにする際のメリットとデメリットを徹底解説する。本稿をヒントに、後悔しないためのポイントを押さえて、理想の庭づくりを成功させてほしい。

ハイノキ(イノコシバ)を庭木にすると後悔する?その理由とは

ハイノキは細身の幹と枝、小ぶりな葉、そして愛らしい花が魅力の庭木だ。揺れる姿が涼しげで、とてもシックである。多くの庭師がおすすめするシンボルツリーだろう。
しかし、デメリットもあるため、それを知らずに植えると後々の後悔につながりかねない。長所と短所の両面を理解して植えることで、対策が打てたり、満足度が高まったりする。
ハイノキのおもなデメリットを4つご紹介するので、シンボルツリー選びのヒントにして欲しい。
デメリット1:年間で20~30cmほどしか成長しない
ハイノキは、高さが5~10メートル程度になる樹木だ。しかし、成長速度が非常に遅く、年間で約20~30cm程度しか成長しない。
ハイノキがシンボルツリーとして存在感を発揮するには、植えてから数年かかるだろう。

一方、遅い成長速度には以下のような利点もある。
- 樹形が乱れにくい
- 剪定の頻度が少なくて済む
- 庭のスペースが限られていても育てやすい
ハイノキをシンボルツリーとして検討する際は、これらの成長に関するメリットとデメリットをよく理解しておくことが大切だ。
デメリット2:他のシンボルツリーに比べて価格が高い
ハイノキは成長速度が遅く、育成に時間がかかる。だから、成熟した木の価格は高額に設定されることが一般的だ。
その美しさと管理のしやすさから人気があるため、需要が高いことも価格上昇の一因だろう。ハイノキをシンボルツリーにするなら、価格も意識しておきたい。
ハイノキとよく比較される樹種と、価格を比較してみてほしい。2m程度のものであれば、おおよそ以下のような違いがあるはずだ。
- ハイノキ:2.5~3.5万円前後
- ソヨゴ:2~3万円
- アオダモ:2~3万円
- シマトネリコ:1.5~2.5万円
ハイノキは、その成長の遅さや育成にかかる時間から、高い価格に設定されているものが多い。わりと成長が遅いソヨゴやアオダモも、やや高価である。
一方、年間に50cm程度成長できるシマトネリコは、他の樹種に比べて安価である。シマトネリコがよく選ばれるのは、その価格にもヒミツがあるのだ。
デメリット3:乾燥に敏感で、水やりを怠ると枯れてしまう
ハイノキは、乾燥に敏感な樹種だ。根が浅いため、土壌が乾燥すると影響を受けやすい。水やりを怠ると、枯れてしまうリスクがある。
ハイノキの植え付け直後は、水やりを徹底する必要がある。根が定着するまでの間は、土が乾いたらすぐに水を与えることが重要だ。
ハイノキが自生する山地では、落ち葉が自然にマルチングの役割を果たしている。腐葉土やバーク堆肥で、マルチングをしてやるのもよいだろう。

ハイノキは、適切な水やりと管理をおこなえば、枯れるリスクを大幅に軽減できるだろう。
デメリット4:春に大量の花粉を放出する恐れがある
ハイノキは春に花粉を放出する樹種であり、花粉症の原因になることがある。3~5月にかけて飛散が見られ、4月中旬頃にピークとなるため、この時期に花粉症の症状が悪化しやすい。
だから、ハイノキはアレルギー体質の人にとっては注意が必要な庭木だ。くしゃみや頭痛、かゆみなどの症状を引き起こす可能性がある。

ハイノキ(イノコシバ)を庭のシンボルツリーにするメリット4選

ハイノキは、庭木として人気の樹種だ。たくさんの魅力を持っている。
ここからは、その魅了をご紹介しよう。ハイノキの魅力を知れば、きっとあなたもシンボルツリーにしたくなるはずだ。
メリット1:剪定の手間が少なく、長期間樹形を維持しやすい
ハイノキは成長が非常に遅く、頻繁に剪定をおこなわなくても、樹形を維持しやすい。むしろ、大胆な剪定は避けたい。強く剪定すると、元の姿に戻るまでに長い時間がかかってしまう。
剪定の適期は、3~4月ごろ、あるいは11~12月ごろだ。枯れた枝や混み合った枝を軽く整える程度で、自然な樹形を楽しめるだろう。
メリット2:年中緑を保つため、季節を問わず美しい
ハイノキは常緑樹であり、年中緑を保つ特性を持っている。夏には緑の葉が生い茂り、秋以降は葉の色が薄くなる。冬の寒い時期でも、お庭に彩りを添えてくれるだろう。
また、ハイノキは観賞価値が高く、それも庭木としての人気を後押ししている。シックな幹と枝、エレガントな葉や花、優雅な立ち姿。そんなハイノキが風に揺れる姿は、とても涼しげである。
メリット3:春に白い小花を咲かせ、夏以降に黒紫色の実をつける
常緑樹は、落葉樹に比べてきれいな花や実をつけるものが少ない。しかし、ハイノキは春に白い小花を咲かせ、夏から秋にかけて雌株が黒紫色の実をつける。
花は5枚の花弁を持ち、大きさは直径1~2cm程度だ。中央からはじけ飛びだしたような、長い雄しべが特徴的である。所々に群がって咲く姿が、華やかで愛らしい。
ハイノキの実は長楕円形で、鳥が好んで食べるため、庭に植えると野鳥が見られるかもしれない。ハイノキは、四季を通じて楽しめる樹木と言えるだろう。
メリット4:日陰や半日陰でも育つため、植栽場所の柔軟性が高い
ハイノキは、日差しに弱い。直射日光が当たり続ける場所や、強い西日にさらされる場所は、葉が黄色くなったり落葉したりするので注意が必要だ。
ハイノキが日なたを嫌うのは、山野に自生していた樹木だからだ。木漏れ日が差し込む森の中のような《薄暗い環境》に適応しているため、直射日光や乾燥が苦手なのだ。
しかし、裏を返せば「ハイノキは日陰や半日影でも育つ」と言える。だから、植栽場所の柔軟性が高い。


後悔しない!ハイノキ(イノコシバ)の植え方・育て方

ハイノキのメリットとデメリットを解説した。あなたは、ハイノキを植えてみたくなっただろうか?
植えてみたくなった方のために、植え方と育て方のポイントをご紹介しよう。
ハイノキを植えるのに適した環境
ハイノキを植えるのに適した環境は、以下のとおりだ。
日照 | 半日陰から日陰が適している。直射日光や西日が強い場所では、葉焼けを起こすことがある。 |
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土壌 | 水はけがよい、よく肥えた土地が最適。堆肥や腐葉土をすきこんだ土に浅めに植えると、根付きがよくなる。 |
場所 | 湿気がこもりやすい場所は避ける。風通しが良い環境で育てることで、病害虫の発生を抑えられる。 |
温度 | 関東以南の比較的暖かな気候を好む。霜が降りる地域では、保護が求めらる。寒冷地では、鉢植え推奨。 |
これらの条件を満たすことで、ハイノキは美しいシンボルツリーとして庭に彩りを加えてくれるだろう。
ハイノキの植え方と植える際の注意点
ハイノキの植え付けは、2~4月ごろ、または9~11月ごろが適している。とくに春は成長が活発になるため、よい時期だろう。根や新芽の伸び始める前に植え付けたい。
他の季節でも植え付けられなくはないが、日照が強い真夏は避けるほうが望ましいだろう。植え付け方法を、3ステップでご紹介する。
STEP.1
植え付け場所を選ぶ。直射日光や強い西日を避ける必要があり。日陰か半日陰の場所が理想的。
STEP.2
用土を準備する。水はけのよい肥沃な土壌を好むので、腐葉土やバーク堆肥を混ぜ込むとよい。
STEP.3
植え付ける。根鉢の3倍程度の穴を掘り、土を柔らかくしてから植え、周囲の土を軽く押さえて安定させる。
植えたあとは、たっぷり水をやり、根に土をなじませよう。
ハイノキの育て方(水やり、施肥、害虫対策)のポイント
ハイノキの水やりや施肥、害虫対策のポイントをご紹介する。
水やり
ハイノキは乾燥に弱い。植え付け直後は、水やりを徹底する必要がある。根が定着するまで、土が乾いたらすぐに水を与えることが重要だ。
根が定着すれば、降雨でじゅうぶんだろう。ただし、乾燥が続く場合は、水を与える必要がある。
施肥
ハイノキは、肥料を与えなくても育つ。成長を促進したい場合は、12月から2月ごろに寒肥(緩効性肥料など)を与えるようにするとよいだろう。
病害虫対策
ハイノキは、比較的病害虫に強い。しかし、風通しが悪いとアブラムシやカイガラムシ、青虫が発生することがある。風通しのよい場所に植えることが大切だ。

では、害虫が発生してしまったらどうすればいいのか?初期段階で発生数が少ない場合は、手作業で取り除いたり、水で洗い流す方法が有効だ。
害虫の被害が広範囲に及んでいる場合は、殺虫剤を使用する必要があるかもしれない。適切な薬剤を適切な濃度で使用しよう。

ハイノキ(イノコシバ)のよくある疑問

最後に、ハイノキのよくある疑問と回答をご紹介して終わりたい。
Q1:ハイノキが枯れる原因は?
ハイノキは、強い日差しと乾燥を嫌う樹木だ。枯れる原因としてもっとも多いのは、日光が過剰、あるいは水分不足だろう。
日差しが強い場合は、可能なら日陰に移そう。写せない場合は、株元にバーク堆肥等でマルチングをして、土が乾かないようにしてみよう。
また、ハイノキは比較的病害虫に強い樹木だが、アブラムシやカイガラムシが発生すると葉の栄養を吸われ、枯れる原因となる場合がある。

水はけが悪い場合は根腐れ、鉢植えなら根詰まりも枯れる原因になり得る。また、過剰な施肥が根を傷め、枯れる場合もあるの注意したい。
Q2:ハイノキは花のニオイは、臭い?
ハイノキには、強いニオイはない。花に顔を近づけると、ほのかに甘い、いい香りがする。
不快なものではなく、むしろ心地よいと感じる人が多いタイプの香りだから、近所迷惑になるようなことはないだろう。
とは言え、香りの感じ方は人それぞれだ。好きではないと感じる人もいるかもしれない。

Q3:風水的に、ハイノキを玄関に植えても大丈夫?
ハイノキは、シンボルツリーとして人気の木だ。だから、玄関に植えるご家庭が多いのではないだろうか?
ただし、出入りをジャマするような配置は「剣心殺」と呼ばれ、忌まれる。アプローチのど真ん中に植えるようなことは、避けるほうが無難だろう。
なお、白い花が咲く花や木は「北に植えるのが吉、南は凶」とする専門家もいる。

風水や家相を参考にする場合はほどほどにして、最終的にはご自身の好みや玄関の環境などを考慮して判断することが大切だ。
Q4:ハイノキは鉢植えでも育てられる?
ハイノキは、鉢植えでも育てられる。鉢植えは移動が簡単なので、環境調整が容易だ。根が広がりにくいため、地植えに比べて成長速度を遅くできる。
鉢植えで育てる場合は、成長に合わせて鉢のサイズを大きくしていく必要がある。最初から、少し大きめの鉢に植えるとよいだろう。
なお、鉢は土の量が限られているため、乾燥しやすくなる。夏場は、水切れを起こさないように、こまめな水やりを心がけたい。


まとめ:ハイノキをシンボルツリーにすると後悔するって本当?
さいごに、本稿のおさらいをしておこう。
ハイノキをシンボルツリーにすると後悔する?
ハイノキは、シンボルツリーとして人気の樹種だ。ただし、いくつか短所があるので、把握してから植えないと、あとで後悔することもあり得るだろう。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
ハイノキの魅力やメリットは?
ハイノキは常緑で、季節を問わず立ち姿が優雅だ。春には愛らしい小花を咲かせる。剪定の手間が少ないところや、日陰でも育つところも魅力と言える。詳しくはこちらをご覧いただきたい。