
「和風の庭にトクサを植えたら、素敵かも」そんな風に考えたことはないだろうか?シンプルでモダンな佇まいが人気のトクサだが、じつは「庭に植えてはいけない」とウワサされている。
トクサは、その涼しげな見た目とは裏腹に、地下茎を使って驚くほどの勢いで増える。その結果、他の植物に悪影響を与えたり、管理が困難になったりするケースがあるのだ。
本稿では「トクサを植えてはいけない」と言われる理由や、増えすぎを防ぐコツをご紹介する。庭を長く楽しむために、トクサの特徴やリスク、そして管理方法をしっかり理解しておこう。
トクサ(ハミガキクサ)を庭に植えてはいけないと言われる理由

トクサは、おもに本州中部以北の山間の湿地に自生している。観賞用などの目的で、和風建造物や一般住宅の庭で栽培されることも多い。日本では、生活圏で普通に見られる植物だ。
しかし、そんななじみ深さとは裏腹に、軽い気持ちで植えて後悔される方もいる。もしも、あなたもトクサの栽培を考えているのなら、その難点を理解しておこう。
地下茎でどんどん勢力を広げる
トクサは、地下茎でどんどん勢力を広げる植物だ。地下茎が土中を浅く横走し、ジワジワと領域を広げ、離れたところの地表から平然と茎を出す。
地下茎は、人の目に触れない。気づかないうちに隣家まで進出することもあるので、植えつける際には細心の注意が必要だ。
地下茎による勢力拡大は、トクサの最大の難点と言える。この難点に直面した人が「絶対に庭にトクサを植えてはいけない」と注意喚起しているのだ。
他の植物の成長を阻害する恐れがある
トクサは思いもよらない離れた場所へと広がり、他の植物が植わっている場所にも進出する。そこで土壌の栄養分を横取りして、他の植物の成長を阻害する恐れがある。
トクサを庭に植えるのであれば、旺盛な繁殖力と強い生命力によって庭を占領されてしまわないように、くれぐれも注意したい。
除草するのが難しい
トクサは、地上部を引き抜いても地下茎が残るため、除草するのが難しい植物だ。周囲にどんどん地下茎を伸ばし、次々と生え続ける。
インターネットでトクサを植えた方の体験談を探せば、苦労されている事例をすぐに発見できる。参考になる体験談の例をあげておこう。
最初は単に引き抜いて駆除しようとしたのですが、無理でした。次にいろいろな除草剤を使ったのですが、薬品のにおいがきつく、トクサがダウンする前に私が参ってしまい中止しました。
さすがに薬品が多いところはぽっかりと枯れたのですが、逆に四方八方に地下茎を伸ばし、今度は鬼のように太いのが出てきたりしています。
そして、こまめに刈り取るということにしたのですが、一本刈ると、その軸から数本の細いやつがこれでもかと伸びてきます。そんなこんなで、数年、トクサと格闘しています。
出典:Yahoo!知恵袋
トクサは、植えるのは簡単でも、いざ除草しようとするとかなり難しい。軽い気持ちで植えると、後々大変なことになる。上述の体験談は、そのことを教えてくれている。
植える際は、トクサの特性を理解したうえで、栽培する場所や管理方法をよく考える必要がある。
トクサ(ハミガキクサ)の魅力や、庭に植えるメリット

トクサの難点をご紹介した。一方、トクサには魅力もあり、とりわけ和モダンな家のお庭で重宝される。
トクサの魅力やメリットをご紹介しよう。
初心者でも比較的管理しやすい
トクサは、初心者でも比較的育てやすい植物だ。適切な育て方を実施することで、健康的に生長させられる。
栽培の容易さの観点から、トクサの特徴をご紹介しよう。
- 繁殖能力が高い
- 耐寒性がある
- 意外と耐暑性に優れている
- 耐陰性も低くない
トクサの繁殖能力の高さは、先述のとおりだ。
また、本州中部から北海道まで自生しているトクサは、耐暑性も耐寒性も持ち合わせている。農林水産省の資料によると、最低生育温度は「-7℃」となっている。
耐陰性も低くない。こちらも、上述の農林水産省の資料によると、最低照度係数は「1,000ルクス × 10h」となっている。
1,000ルクスと言えば、日没の30分前くらいの、信号や車のブレーキランプなどの点灯が目立ち始める明るさだ。トクサなら、日陰でも生育できるだろう。
一方、トクサの栽培には注意点もある。非常に丈夫に思えるトクサも、以下の2点には配慮したい。
- 水切れに弱いので、鉢栽培は注意
- 夏の直射日光や強い西日は避ける
トクサは、水切れと真夏の直射日光に弱い。違う言い方をするなら、日当たりと水やりに気をつければ、特別な管理は必要ない。
丈夫で繁殖力が旺盛なトクサなら、お世話のポイントを掴めば、園芸初心者でも無理なく育てられるだろう。
風水的に、運気アップが期待できる
トクサを植えると、風水の観点から運気アップが期待できる。風水は「気」の力を利用した環境学であり、生気のあるものを善しとする。
植物は、生きている。呼吸をしていて、生気かあり、そして成長する。よって、風水では植物を「成長や発展の気を与えてくれるもの」として捉えるケースが多い。
トクサも、一般的に運気アップが期待できる植物と考えられている。また、以下のような特徴も、縁起の観点から好まれている。
- 細長く真っ直ぐ上に伸びる形状 ⇒ 健康運や人気運が上昇すると考えられている
- 金物をトクサで磨くとピカピカになる ⇒ 金運が上昇すると考えられている
じつは、トクサは茎でものを研げることから「砥草 (とくさ)」と呼ばれるようになった。別名を「歯磨き草」というように、かつては歯磨きにも使用されていた。
このような特徴から、トクサを植えると金運がアップすると言われている。とりわけ、トクサを玄関先に飾ると、風水的によい運を招き入れられると考える方が少なくないようだ。
一方、1本だけ植えると「困」の字を連想させるため、縁起が悪いとする向きもある。トクサを1本だけ植える方はいないと思うが、気になるようなら気をつけよう。
シンプルでモダンな佇まいが、和モダン庭園にぴったり
トクサは、モダンかつスタイリッシュな雰囲気を醸し出す植物だ。その常緑性や節のあるスリムな茎、そして垂直に生育しながら群生する草姿が美しい。生け花の客材にも用いられる。
和モダンな庭では、トクサのようなシンプルな植物を合わせることで、洗練された空間を演出できる。狭い場所でも栽培できるため、トクサを重用する園芸家は少なくない。
トクサは、ツワブキやフウチソウなど、日本に自生する植物と組み合わせるのがおすすめだ。日本の気候に適応している植物を選べば、あまり手をかけなくてもちゃんと成長してくれる。

トクサ(ハミガキクサ)の植え方・育て方

つづいて、トクサの植え方と育て方のポイントをご紹介しよう。トクサを育ててみたくなった方は、ぜひヒントにしていただきたい。
トクサを植えるのに適した環境
トクサが好きな環境は《明るい日陰》と《湿り気のある土》だ。だから、日当たりと水やりに配慮して、トクサを植える場所を選ぼう。
日当たり | 明るいところが好きだが、真夏の直射日光を嫌う。真夏は直射日光や西日の当たらない明るい日陰が理想的。日陰でも育てられる。 |
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水やり | 水を好むので、水切れしないように注意。完全に乾燥させないようにする。とくに鉢植えの場合は、土の乾き具合をこまめにチェック。 |
トクサとコケを一緒に植える方もいる。コケがあると、土壌の乾燥の程度をつかみやすい。コケが元気ならOKだ。
ちなみに、ミズトクサなど、一部が水につかっていても成長できるものもある (抽水性)。
トクサの植え方と、植える際の注意点
トクサの植え方のポイントは、以下のとおりだ。
- 適度に日当たりと水はけのよい場所を選ぶ
- 鉢植えの場合は排水穴のある深めの鉢を使う
- 地植えの場合は植える場所を限定する
トクサは、乾燥する、あるいは水はけが悪い土地以外なら土壌を選ばずに育つ。一般的な赤玉土でもOKだ。植え付け後に、たっぷりと水を与えよう。
ただし、地植えにするなら範囲を限定することが大切だ。周りを根止め板などで囲っておかないと、地下茎でどんどん広がってしまう。

増えすぎて困ったら、掘り起こして処分するしかない。根が残ると再生するので、徹底的に除草する必要がある。
増えすぎを抑える剪定のコツ
トクサは、旺盛に茎を伸ばす。定期的に剪定して、株の大きさを調整することが大切だ。伸びすぎた茎は節の上で切り詰め、傷んで黄色くなった茎は根元から取り除こう。
剪定のタイミングは、春から秋にかけて、伸びすぎた茎を適宜切り詰めるとよいだろう。冬になると地上部が枯れる品種もある。枯れた茎は、根元から刈り取ろう。
トクサが夏や冬に枯れるのを防ぐコツ
非常にタフなトクサでも、枯れてしまうことがある。たとえば、トクサは夏の直射日光や強い西日が苦手だ。強い日差しに当てると、枯れてしまう可能性がある。
夏の直射日光や強い西日対策としては、以下が考えられる。
- 真夏は西日や直射日光が当たらない明るい日陰に移動する
- 移動できない場合は、寒冷紗などで日よけをする
- 鉢植えなら、夏は明るい日陰に移動して管理する
冬に枯れるケースもある。トクサは耐寒性のある植物だが、生育限界温度を下回ると枯れてしまうことがあるのだ。
冬の寒さ対策としては、以下が考えられる。
- 屋外なら、霜の心配がない暖かい場所で育てる
- 鉢植えなら、冬は室内の日当たりのよい場所に取り込む
一方、水切れにも注意が必要だ。トクサは乾燥状態を嫌うため、水切れを起こすと枯れてしまう可能性があるのだ。土の表面が乾いたら、たっぷり水をやろう。
トクサは鉢植えでも育てられる?
トクサは、鉢植えでも適切な用土と水はけを確保すれば問題なく育てられる。鉢植えにする際の栽培のポイントは、以下のとおりだ。
- 底に穴のある深めの鉢を使う
- 鉢底にはしっかりと鉢底石を入れる
- 植え付け後はたっぷりと水を与える
鉢植えの場合も、基本的な管理は地植えと同様だ。トクサは一部が水中に使っていても生育できるが、過湿状態の鉢では根腐れを起こす可能性がないとは言えない。
底に穴のある深めの鉢を使い、鉢底から茎がとびださに用に工夫して植えると安心だ。
鉢植えの管理のポイントもご紹介しよう。繰り返しになるが、乾燥や真夏の直射日光に注意したい。
- 明るい日陰に置き、夏の直射日光は避ける
- 冬は室内の日当たりのよい場所に取り込む
- 土の表面が乾いたら、たっぷり水をやる
- 肥料はあまり必要ない (与えるなら緩効性の化成肥料)
- 株が込みいってきたら、春に株分けをする
鉢栽培なら、地下茎の問題も心配せずに栽培できる。気楽にトクサを育てられるだろう。
トクサに毒性はある?子どもやペットに危険?
昔の人は、トクサを歯磨き代わりに使っていた。中毒になっていたかというと、そのような記述は見当たらない。少量の摂取では、中毒を起こすほどの毒性はないと考えられる。
むしろ、トクサには薬草としての側面がある。乾燥させた茎は「木賊 (もくぞく)」と呼ばれる生薬になり、煎液で洗眼すると《かすみ目》や《涙目》などに効果があるとされている。
なお、近縁種であるスギナ(つくし)は食用として用いられるが、ケイ酸やアルカロイドを含むため多量摂取は禁物とされている。幻覚作用やマヒ症状、ビタミンB1欠乏症を引き起こすのだ。
よって、トクサも注意するに越したことはない。子どもやペットが、誤って口に入れないようにしたい。
とりわけ、犬や猫は好奇心が旺盛で、トクサを口にしてしまう可能性がある。ペットの誤食にじゅうぶん注意し、植える場所を考慮する必要があるだろう。
まとめ:トクサ(ハミガキクサ)を庭に植えてはいけない理由
さいごに、本稿のおさらいをしておきましょう。
トクサを庭に植えてはいけない?
トクサは地下茎で広がりやすいため「植えてはいけない」という意見がある。植えてもいいが、他の植物の栽培地や隣家へ侵入しないように注意が必要だ。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
トクサの魅力は?
トクサは初心者でも比較的管理しやすい。風水的に、運気アップが期待できると言われる。シンプルでモダンな佇まいが、和モダン庭園にぴったりだ。詳しくはこちらをご覧いただきたい。