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サカキ(榊)を庭に植えてはいけない理由とは?鉢植えで育てる方法

サカキ(榊)を庭に植えてはいけない理由とは?鉢植えで育てる方法
ホリカワ
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住宅ライターのホリカワです。植栽やお庭づくりのポイントを、わかりやすく解説します。

サカキは神聖視されていて、魔よけになる。常緑で白い花を咲かせるため、観賞価値もある。しかも、丈夫で育てやすい木だ。しかし「庭に植えてはいけない」と言われているのをご存じだろうか?

じつは、サカキはその神聖さゆえ、一般家庭で植えるのは不敬と感じる方がいる。また、栽培において初心者には難しい側面があり、「他の木にしておけばよかったかな?」となりがちなのだ。

本稿では「サカキを庭に植えてはいけない」と言われる理由を詳しくご紹介する。家相や風水の観点からも考察するので、ご家庭で栽培してみたい方はぜひ最後までチェックしていただきたい。

「サカキ(榊)を植えてはいけない」と言われる理由と対処法

「サカキ(榊)を植えてはいけない」と言われる理由と対処法

さっそく、「サカキを庭に植えてはいけない」と言われる主な理由を3つご紹介する。

  • 神聖な木であるため、庶民が植えるのは不敬とされる
  • 栽培管理上、初心者には難しい側面(環境、虫害)がある
  • 毒性があると誤解されている(シキミとの混同)

それぞれ、詳しく解説しよう。

神聖な木であるため、庶民が植えるのは不敬とされる

サカキは神聖な木であるため、「庶民が植えるのは不敬」と考えられていた時代があった。しかし、現代では「不敬」と考える人はあまりいない。最終的な判断は、個人に委ねられている。

そもそも、サカキはなぜ神聖視されているのだろうか?それを理解すれば、サカキの扱い方を判断しやすくなるだろう。

サカキが持つ特別な神聖性

まず大前提として、古来、サカキは他の庭木とは一線を画す「特別な木」であった。

日本神話では、天照大神あまてらすおおみかみ天岩戸あまのいわとにお隠れになった際、神々がサカキの木に八咫鏡やたのかがみ八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを飾り付けてお誘いするのに使ったとされている。

神さまの依り代よりしろとしてのサカキ

この神話から、サカキは神さまをお招きするための依り代、つまり《神霊を宿す神聖な媒体》と見なされるようになった。

神社の祭祀で玉串として捧げられるのも、サカキに神さまが遷霊されると考えられているからだ。

サカキは単なる縁起のよい木ではなく、神域と人間界を繋ぐ、あるいは神さまそのものが宿る可能性のある極めて神聖なオブジェクトだったのだ。

歴史的な社会階級と「分相応」の考え方

日本の歴史的な社会構造も関係してる。かつて神事や祭祀は、朝廷・貴族・武家といった支配者層が国家や領地の安寧を祈って執りおこなう非常に重要な公的行事だった。

そのため、神事に不可欠なサカキを邸宅に植えて管理することは、そうした特権階級の役割、あるいはステータスシンボルのひとつでもあったと考えられる。

また、江戸時代までの身分制度が厳しかった社会では「分相応 (ぶんそうおう)」が原則とされた。つまり自分の身分にふさわしい生活や振る舞いをすることが美徳とされ、社会秩序の根幹となっていた。

農民や町人といった庶民が、支配者層の文化やシンボルを安易に真似ることは、この秩序を乱す行為と見なされる風潮があった。

これらが組み合わさることで、以下のように解釈されるようになったと考えられる。

神さまが宿る神聖な木(依り代)を、神域でもなく、神事を司る高貴な身分の者の邸宅でもない「一般庶民の日常空間」に軽々しく植えるのは、神さまに対して畏れ多く不敬である。
 
また、それは支配者層の慣習をまねる、身の程をわきまえない行為である。

これが「一般家庭がサカキを植えると不敬」という考え方の核心ではないだろうか。

サカキのタブー(禁忌)は過去のもの

「一般家庭がサカキを植えると不敬」という考え方は、《罰当たり》とは少し違う。

《神聖なものへの畏敬の念》と《社会の秩序を守る価値観》から生まれた、一種のタブーだったのではないか。

ホリカワ
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身分制度がなくなった現代では、このような考え方は過去のものとなりました。

各家庭に神棚を祀ることが一般化してからは、自宅の庭で育てた清浄なサカキを神棚にお供えすることは、むしろ《神さまへの敬意を示す丁寧で望ましい行為》と捉えられるだろう。

歴史的な背景を知ることで、サカキという木が持つ文化的な重みをより深く理解できる。しかし、それを理由に現代の私たちが庭に植えることをためらう必要はない。

栽培管理上、初心者には難しい側面(環境、虫害、樹高)がある

サカキは、非常に生命力が強く丈夫な木だ。しかし、ガーデニング初心者が何も知らずに育て始めると「難しい」「うまくいかない」と感じてしまう側面がある。

その主な理由は《環境》と《虫害》、そして《樹高》だ。

サカキは強い日差し・乾燥・強風が苦手

「庭木は日当たりのよい場所に」と考える方は多いが、サカキはそうではない。このミスマッチが、失敗の原因になりやすい。

サカキは本来、他の大きな木の下などに自生する低木だ。そのため、半日陰から明るい日陰の環境を好む。

夏の強い直射日光や西日が長時間当たる場所に植えると、葉焼けを起こすことがある。葉が黄色や茶色に変色してしまうか、ひどい場合は枯れてしまうので、植える場所に注意したい。

ホリカワ
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よかれと思って庭の南側の一等地に植えてしまい、葉焼けや水切れで枯らしてしまう、というケースが少なくありません。

また、サカキは適度な湿り気を好むため、乾燥しやすい土壌を嫌う。

強い風があたる場所は、地表が乾燥しやすく、根を浅く張るサカキの植え付けに向いていない。葉も傷めやすくなるため、生育に不利だ。

サカキは、その爽やかなビジュアルとは裏腹に《半日影から明るい日陰の、やや湿潤な場所で元気に育つ》ことを覚えておこう。

特定の害虫に非常に狙われやすい

サカキの栽培で多くの人を悩ませるのが、《カイガラムシ》とその二次被害である《すす病》である。これが、初心者にとって最大の関門と言えるだろう。

なぜ「初心者にとって最大の関門」なのか?理由は以下のとおりだ。

  • 発見が遅れがち
  • 駆除が厄介
  • 二次被害(すす病)が発生する

カイガラムシは数ミリ程度の小さな虫だ。葉の裏や枝が混み合った内側のほうに発生するため、初期段階での発見が非常に難しい。

ホリカワ
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ガーデニング初心者は、後述の「すす病」が広がってから初めて異変に気づくケースが少なくないと思います。

カイガラムシは、成虫になると貝殻のような硬い殻をかぶり、枝や葉に固着する。そのため、カイガラムシの成虫は薬剤が効きにくい。

手作業(ハケや歯ブラシでこすり落とす)でも取り除けるが、ビッシリと枝や葉に付着するため、除去に大変な労力がかかる。

カイガラムシを取り除くなら、卵か幼虫のときがラクだ。発生しやすい5~7月ごろを中心に、卵や幼虫、あるいは成虫が付いていないかチェックするといいだろう。

カイガラムシは、植物の汁を吸う際に甘くベタベタした排泄物を出す。この排泄物を栄養源として、黒いカビが繁殖し、葉や枝が黒いすすで覆われたように黒くなる。

この状態を「すす病」と呼び、見た目が悪くなるだけでなく、光合成を妨げてサカキの生育を著しく阻害する。最悪の場合、木全体を弱らせてしまう。

初心者は「知らないうちにカイガラムシが大量発生 ⇒ 気づいた頃には木がベタベタ・真っ黒 ⇒ 慌てて薬を撒くが効かない ⇒ 手作業での駆除が大変」という悪循環に陥りやすい。

その結果、「サカキは難しい」という印象につながる。サカキは「植えっぱなしでOK」というタイプの木ではないことを覚えておきたい。

サカキは思った以上に大きくなる

サカキは生命力が強く、環境が合うと5~10mほどの高木に成長する。コンパクトな背丈を維持するには、定期的な剪定が不可欠だ。

また、剪定をしないと枝が混み合って風通しが悪くなり、病虫害が発生しやすい環境をつくってしまう。

一方、初心者は「どこを切ればいいかわからない」と、剪定作業自体にハードルを感じることが多い。剪定の要るサカキは「育てるのが難しい」と感じるかもしれない。

毒性があると誤解されている(シキミとの混同)

「サカキに毒性がある」と言われることがあるが、完全な誤解だ。この誤解が広まった主な原因は、シキミ(樒)という見た目が似た植物との混同にある。

樒は、花・葉・茎・枝・根など、植物全体に「アニサチン」という神経毒を含んでいる。とくに実の毒性が強く、日本では「毒物及び劇物取締法」により劇物に指定されているほどだ。

誤って口にすると、嘔吐・下痢・けいれん・呼吸困難、あるいは致死性の中毒を起こすこともある。

ホリカワ
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そのため、小さなお子さまやペットがいるご家庭では、取り扱いに細心の注意が必要です。

両者は、用途も植物の分類も全く異なる。しかし、同じように祭祀で使われ、似たような緑の葉を持つため、勘違いされることが非常に多いのだ。

簡単な見分け方をご紹介しておこう。葉の生え方や香り、実の形状などで判断してほしい。

サカキ 枝に対して左右交互に生える
シキミ 枝の先に葉が密集して生える
香り サカキ ほぼ無臭
シキミ 抹香のような香り
果実 サカキ 小さく丸い黒紫色の実
シキミ 星形(八角に似る)で猛毒

このように、「サカキに毒がある」という情報は誤りだ。安心して神棚にお供えしたり、庭木として育てたりしていただきたい。

シキミについては、以下の記事で詳しく解説している。ご興味がある方は、あわせてご覧いただきたい。

サカキ(榊)の魅力と栽培するメリット

サカキ(榊)の魅力と栽培するメリット

つづいて、サカキの魅力をご紹介しよう。

  • 神聖かつ縁起がよい植物で、魔よけにもなるとされる
  • 常緑の葉や可憐な白花、黒紫色の実などを観賞できる
  • 丈夫で生命力が強く、比較的育てやすい

それぞれ、詳しく解説する。

神聖かつ縁起がよい植物で、魔よけにもなるとされる

サカキは、日本の文化や神道において「神聖、縁起物、魔よけ」などの側面を併せ持つ、非常に重要な植物である。

これらの特性はそれぞれ独立しているのではなく、「神聖であるからこそ縁起がよく、魔よけの力を持つと信じられている」というように深く結びついている。

神聖な木

既にお伝えしたとおり、サカキは他の庭木とは一線を画す特別な神聖性を持っている。これを象徴するのが、サカキの漢字表記だ。

「榊」という漢字は日本で作られた国字で、「木」へんに「神」と書く。まさに「神の木」を意味しており、サカキが神聖視されていることを如実に物語っている。

縁起がよい木

冬でも枯れることなく常に緑を保つサカキの強い生命力は、不変・永遠・長寿の象徴とされている。そんなサカキは、家や家系の永続的な繁栄を成就するための縁起物として重宝されている。

このことからサカキは「栄える木」と呼ばれ、これがサカキの語源になったという説がある。

魔よけの木

神聖な木であるサカキには、邪悪なものを退ける力があると信じられている。そのため、古来より神棚へのお供えや、神事・祭礼の際に欠かせない存在とされてきた。

サカキの語源には、神域と人間が住む俗世との「境の木」という説もある。神社にサカキが植えられているのは、神域と俗世を区切り、不浄なものが神域に入り込むのを防ぐ結界となるからだ。

このように、サカキは神話の時代から現代に至るまで、ずっと神聖視されている。人々の暮らしに繁栄と安寧をもたらす特別な存在として、大切に扱われ続けている植物だ。

常緑の葉や可憐な白花、黒紫色の実などを観賞できる

控えめながらも気品のある佇まいのサカキは、観賞用の庭木としても楽しめる。

通年楽しめる、つややかな常緑の葉

サカキの最大の魅力は、なんといっても一年中青々とした光沢のある《葉》だろう。深い緑色でつややかな葉は、生命力にあふれ、庭全体に清涼感と落ち着きを与えてくれる。

派手さはないが、お庭の副次的な素材として植えることで、他の花木や草花を引き立ててくれる。生垣や目隠しとしても、非常に優秀だ。

初夏を彩る、可憐な白い花

6~7月頃になると、サカキは小さく可憐な花を咲かせる。直径1~1.5cmほどの、白または淡いクリーム色をした釣鐘状の小さな花が、葉の付け根に下向きに咲く。

桜やツツジのような華やかさはないが、緑の葉の間からひっそりと顔を出す姿は、非常に奥ゆかしく楚々とした魅力がある。小さな花だが、季節の移ろいを感じさせてくれる。

秋から冬にかけての、黒紫色の実

サカキは、花のあとに実がなる。実は最初緑色だが、秋が深まるにつれて黒紫色に熟していく。この深い色の実と、常緑の葉とのコントラストは、冬枯れの庭でひときわ目を引く。

サカキの実は、ヒヨドリやメジロなどの貴重な食料にもなる。庭に鳥たちが訪れる姿を観察するのも、サカキを育てる楽しみのひとつと言えるだろう。

丈夫で生命力が強く、比較的育てやすい

ガーデニング初心者にとって榊は「育てるのが難しいと感じる側面がある」とお伝えした。

しかし、サカキは基本的に丈夫で、生命力が強く、比較的育てやすい木である。環境や病虫害に注意を払えば、初心者でも楽しみながら育てられる。

サカキは丈夫で生命力が強い

サカキは、強健な植物だ。一度根付いてしまえば、ある程度の環境の変化には耐えられる。極端な日照りや乾燥が続かない限り、簡単に枯れてしまうことはないだろう。

萌芽力も強い。切られたり傷つけられたりした箇所から、新しい芽を出す。強く剪定しても、元気に新しい枝を伸ばしてくれる。

病気への耐性もある。カイガラムシとすす病に注意する必要はあるが、木そのものを枯らすような深刻な病虫害には比較的かかりにくい丈夫さを持っている。

サカキは比較的育てやすい

先述のとおり、サカキは半日陰で風当たりの強くない、適度に湿った場所を好む。この最適な場所に植えることができれば、その後の水やりや管理の手間が大きく減る。

逆に、日当たりがよすぎる場所や乾燥しやすい場所に植えてしまうと、葉焼けや生育不良、水切れを起こしやすくなる。お世話に手間がかかる状態になってしまうだろう。

カイガラムシのチェックは「手間」と言えるだろう。ただこれも、週に1回程度枝をよく観察する習慣をつければ、初期段階で発見でき、大きな手間になる前に対処できる。

サカキ(榊)を鉢植えで育てる方法

サカキ(榊)を鉢植えで育てる方法

サカキは縁起のよい常緑樹だ。そのため、観葉植物としてお部屋のインテリアにしたい方も少なくないだろう。

結論から言うと、サカキは鉢植えでも育てられる。鉢植えなら、地植えと比べて根の範囲が制限されるため、大きさの管理がしやすくなる。移動しやすいので、日差しへの対応も容易だろう。

サカキの鉢植え栽培ケアの概要をまとめておこう。

季節 主な作業
春/3~5月 植え付け、水やり、肥料、挿し木を実施。植え付けの最適期。土の表面が乾いたらたっぷりと水を与える。追肥として化成肥料や腐葉土などを施す。挿し木は新芽が出揃った頃が適期。
夏/6~8月 水やり、病害虫対策、挿し木を実施。水切れに注意し、乾燥時は朝・夕2回水やり。カイガラムシやすす病に注意し、早期発見・駆除を心がける。挿し木の最適期 (梅雨時)。
秋/9~11月 植え付け、水やり、冬越し準備を実施。植え付けの適期。土の表面が乾いたら水やり。気温が10度を下回る前に室内へ移動させる準備をする。
冬/12~2月 水やり、肥料、剪定、防寒対策を実施。土の表面が乾いたら水やり (頻度は夏より減らす)。2月頃に寒肥として油かすと腐葉土や堆肥を施す。剪定の最適期。防寒対策を徹底する。

鉢植えで育てる際のポイントを詳しく解説する。

植えるのに適した環境・用土

鉢植えでサカキを健やかに育てるためには、環境と用土が非常に重要になる。

鉢植えに適した置き場所

鉢植えで育てるなら、明るい日陰か午前中の柔らかい日差しが当たる半日影が理想だ。

夏の強い西日や直射日光が当たる場所は絶対に避けたい。鉢の中の温度が上がりすぎて根を傷めたり、水分が急激に蒸発して水切れを起こしたり、葉が焼けたりする最大の原因となる。

鉢植えにする際に気を付けたい気温・湿度の問題

サカキは耐寒性・耐暑性ともに強く、日本のほとんどの地域で屋外栽培が可能だ。ただし、鉢植えは地植えよりも根が凍結しやすい点は留意してほしい。

寒さが非常に厳しい地域では、冬の間は軒下に取り込む、鉢に不織布を巻くなどの防寒対策をするとより安心だ。

適度な湿度を維持したい。風が常に強く吹いている場所や、エアコン(室内機・室外機)の風が直接当たる場所は、葉が乾燥し傷む原因になるので避けたい。

鉢植えに適した用土

サカキは《水はけ》と《水もち》という、相反する性質を両立した土を好む。水はけが悪いと根腐れを起こし、水もちが悪すぎると(特に夏場は)すぐに水切れしてしまうからだ。

要するに、適度に湿潤な土を用意する必要がある。そのもっとも手軽で失敗が少ない方法は、園芸店やホームセンターで販売されている「花木・庭木用の培養土」を購入する方法だろう。

こだわりたい場合は、自分で土をつくってもよい。サカキは肥えた土を好むので、基本的な配合の例は「赤玉土(中粒)2:腐葉土 1」だ。

赤玉土 基本となる粒状の土。通気性、排水性、保水性のバランスがよい。
腐葉土 植物が育つための養分を含み、土をふかふかにして水もちをよくする。

また、鉢の底に必ず鉢底石をしっかり敷き詰めておきたい。そうすることで鉢全体の水はけが格段によくなり、根腐れを防ぐ役割を果たしてくれる。

鉢植えの植え方と注意点

サカキの植え付けや植え替えに最適な時期は、梅雨前の5~6月だ。

気温が安定し、真夏を迎える前に根がしっかりと張る時間があるため、ぜひ梅雨前に作業してみて欲しい。

サカキの植え方

まずは、必要なものを揃えよう。

  • サカキの苗木:園芸店などで購入したポット苗
  • 植木鉢:今入っているポットよりも一回りから二回り大きな鉢
  • 用土:市販の「花木・庭木用の培養土」、または自作の配合土
  • 鉢底石:軽石など、鉢の中の排水性を高める
  • 鉢底ネット:鉢の底穴から土や石が流れ出るのを防ぐ
  • その他:園芸用手袋、スコップ、ジョウロなど

準備ができたら、以下の手順で植え付けをおこなう。


  • STEP.1

    鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、その上に鉢底石を鉢の高さの5分の1程度まで入れる。


  • STEP.2

    鉢底石の上に、用意した用土を鉢の3分の1程度まで入れる。


  • STEP.3

    サカキの苗木をポットから優しく引き抜く。抜けにくい場合は、ポットの側面を軽く揉むと取り出しやすい。


  • STEP.4

    根鉢の底や側面が根でガチガチに固まっている場合は、優しく3分の1ほど崩してほぐす。


  • STEP.5

    黒ずんだ古い根をハサミで除去して、用土を入れた鉢の中央に、根を整えた苗木を置く。


  • STEP.6

    苗木の根鉢の上面が、鉢のフチから2~3cmほど下になるように高さを調整する (ウォータースペース)。


  • STEP.7

    苗木の高さが決まったら、根鉢の周りの隙間に用土を足していき、上から軽く押し固める。


  • STEP.8

    鉢の底から水が勢いよく流れ出てくるまで、たっぷりと水を与え、根と土を密着させる。


植える際の重要な注意点

サカキの定植(苗を本式に植え付けること)を成功させるために、以下のポイントを意識したい。

  • 植え付けの時期を選ぶ
  • 鉢のサイズを欲張らない
  • 深植えしない
  • ウォータースペースを必ず確保する

サカキの定植は、5~6月の梅雨入り前が最適期だ。他には春(3月下旬~4月)や秋(9月下旬~10月)も適している。

ホリカワ
ホリカワ
真夏の日差しが厳しい時期と、根が凍る恐れのある真冬は避けましょう。

早く大きくしたいからと、いきなり大きすぎる鉢に植えるのは逆効果だ。土の量に対して根が少ないと、土が常に湿った状態になり、根腐れの原因になる。

元の根鉢の土の表面が見えなくなるほど深く土を被せてしまう《深植え》も避けよう。植物の根元の部分が土に埋まると、呼吸ができなくなり、株が弱る原因になる。

ウォータースペースも、必ず確保しよう。このスペースがないと、水やりをしても水がすぐに溢れてしまい、土の内部までじゅうぶんに浸透しない。

植え付け後の管理(養生)

植え付け直後のサカキは、人間でいえば手術後のような状態だ。

植え付けてから1~2週間は、直射日光の当たらない明るい日陰で、風当たりの弱い場所に置いて休ませてあげよう (養生という)。

これらの手順と注意点を守ることで、サカキは新しい鉢環境にスムーズに適応し、健やかに成長を始めてくれるだろう。

鉢植えの育て方(水やり・施肥)

育て方のポイントを、季節ごとの管理と合わせて解説しよう。

水やり

鉢植えの管理でもっとも重要とも言えるのが、水やりである。季節によって土の乾き方が異なるため、メリハリをつけることが大切だ。

水やりは「土の表面が乾いたら、鉢の底から水が流れ出るまでたっぷりと与える」のが大原則。ちょろちょろと与えるのではなく、鉢の中の古い水や空気を押し出すように、しっかりと与えよう。

季節ごとの水やりの目安は、以下のとおりだ。

春 (3~5月) 生育期で水をよく吸うが、真夏ほどではない。土の表面が白っぽく乾いたのを確認してから与える。天気の良い日が続けば、1~2日に1回程度与える。
夏 (6~8月) 水切れに最も注意が必要な季節。ほぼ毎日、朝の涼しい時間帯に与える。猛暑日が続く場合は、夕方にも土の状態を確認し、乾いていればもう一度与える。
秋 (9~11月) 春と同様でOK。
冬 (12~2月) 生育が緩やかになり、水の吸い上げも少なくなる。過湿は根腐れの原因になるため、水やりは控えめにする。土の表面が乾いてから1~3日後に与える程度でOK。

なお、夏場は日中の暑い時間帯に水やりをしないほうがいい。鉢の中で水がお湯のようになり根を傷める原因になるため、必ず涼しい時間帯におこないたい。

肥料(施肥)

肥料の与えすぎは根を傷める原因(肥料焼け)になるため、適切な時期に適切な量を与えることが大切だ。

施肥のポイントは以下のとおりだ。

  • 春と秋に緩効性化成肥料などを与える
  • 花のあとにお礼肥を与えるのもよい
  • 冬の終わり頃に寒肥を与える

施肥の適期は、サカキの成長期である春(3~4月)と秋 (9~10月)。ただし、植え付け直後は根が弱っているため、肥料は与えないほうが無難だ。

肥料は何がよいだろうか?⸺ 園芸店で販売されている緩効性の化成肥料が最も手軽で安全だろう。これを春と秋に1回ずつ、規定の量と方法で与える。

花が終わったあとに、体力を回復させるために固形肥料を与えてもよいだろう。冬の終わり(2月頃)にも同様の肥料を与えと、春の芽吹きがよくなる。

剪定する際のポイント

花が終わる6月下旬から7月頃に、剪定をおこないたい。

鉢植えのサカキは、地植えと違ってスペースが限られている。そのため、樹形や健康を維持するために、剪定は非常に重要な作業である。

何のために剪定するのか

サカキを剪定する主な理由は、以下のとおりだ。

  • 樹形の維持・調整
  • 風通しと日当たりの改善
  • 健全な成長の促進

鉢植えはスペースが限られるため、伸びすぎた枝を切り詰めて、全体の大きさと形を整えたい。

枝が混み合ってくると、内側の風通しや日当たりが悪くなる。これが病虫害の最大の原因になるため、不要な枝を間引いて、風と光が通り抜けるようにする。

また、古い枝や弱った枝を取り除くことで、新しい元気な枝の発生が促される。

剪定の適期

剪定の適期は、花が終わった直後(6月下旬~7月頃)だ。この時期はサカキが次の成長段階に入るタイミングで、株への負担が少なく、スムーズに回復してくれる。

次善は春先(3月~4月)だろう。本格的な成長が始まる前に、冬の間に傷んだ枝や不要な枝を整理するとよい。

一方、真夏(株が弱りやすい)と真冬(切り口が傷みやすい)の強剪定は避けたい。枯れ枝を切り取る程度の軽い剪定にとどめたい。

具体的な剪定方法

剪定の際は、清潔でよく切れる剪定バサミを使おう。切れ味が悪いと、切り口の細胞を潰してしまい、株が傷む原因になる。

以下の《不要枝》を見つけて、付け根から切り落とす《間引き剪定》を中心におこなう。

  • 茶色く枯れていたり、明らかに元気がない細い枝
  • 幹の中心に向かって伸びている枝
  • 下に向かって垂れ下がっている枝
  • 他の枝と交差している枝(どちらか一方を残す)
  • すぐ近くで平行に伸びている枝(どちらか一方を残す)
  • 長く伸びすぎている枝(半分以下に切り詰める)

不要枝を根元から取り除く場合は、先述のとおり枝の付け根でキレイに切り落とす。中途半端に枝を残さないようにしよう。

枝の途中で切って短くしたい場合(切り戻し剪定)は、葉や新芽が出ている箇所の5~10mm程度上で切る。外側に向いている芽の上で切ると、次に伸びる枝が外に広がり、美しい樹形になるだろう。

失敗しないためのポイント

最初はどこを切っていいか迷うと思う。焦らず、ゆっくりで大丈夫だ。まずは枯れ枝や、明らかに混み合っている部分から手をつけてみよう。

少し切ったら、離れて眺めてみる。一気に切らず、数本切ったら鉢から少し離れて、全体のバランスと風の通り道を確認する癖をつけよう。

剪定は、サカキと対話するようなものだ。ご紹介したポイントを参考に、ぜひ挑戦してみて欲しい。風通しがよくなったサカキは、きっと元気に夏を越してくれるだろう。

サカキ(榊)のよくある疑問

サカキ(榊)のよくある疑問

最後に、サカキのよくある疑問をふたつご紹介する。

  • 鬼門の方角にサカキを植えるのはNG?
  • 風水的には、サカキを植える場所はどこがいい?

それぞれ、詳しく解説しよう。

鬼門の方角にサカキを植えるのはNG?

鬼門の方角にサカキを植えてもいいのだろうか?⸺ 結論から言うと、NGではないが、注意が必要だ。

鬼門(うしとら、北東の方角)にサカキを植えるのは、家相において邪気を打ち消す対策(鬼門よけ)のひとつと考えられている。

なぜ「鬼門にサカキを植えるとよい」と言われるのか

家相における考え方のひとつに「悪いエネルギー(邪気)は、よいエネルギー(陽気、生気)で打ち消す・防ぐ」というものがある。

鬼門は、その名のとおり「鬼(邪気や災い)が出入りする通り道」とされ、家相でもっとも注意すべき方角だ。一方、サカキは魔よけの力を持つ神聖な木である。

つまり、鬼門に魔よけの力を持つ神聖なサカキを植えることで、邪気が家の中に入ってくるのを防ぐ結界の役割を果たす ⸺ というロジックが成り立つ。

「鬼門にサカキを植えるのは不敬」と考える人もいる

一方で、神の依り代を鬼門に植えるのは「不敬」とする考え方もある。これは神棚にも同じことが言え、「鬼門に設置しても問題ない」と言う人と、「不敬」と言う人がいる。

ホリカワ
ホリカワ
つまり、最終的な判断は個人に委ねられる、ということです。

ちなみに、鬼門よけの植物としてサカキはあまり一般的ではない。もっともよく用いられるのは、以下の植物だ。

  • 表鬼門 (北東):ヒイラギ (柊)
  • 裏鬼門 (南西):ナンテン (南天)

ヒイラギの葉にはトゲがあるため、鬼が嫌うとされる。節分には、ヒイラギに、同じく鬼苦手なニオイを出す《鰯の頭》を差して戸口に置き、魔よけにする風習がある。

また、ヒイラギが常緑樹であることも鬼門よけになっている理由のひとつだ。あらゆる草花が枯れる冬でも緑を維持する姿は、昔の人にとって不思議な存在で、永遠の命の象徴だった。

ナンテンは「難を転じる」と解釈され、縁起のよい木と考えられている。

ホリカワ
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鬼門よけに植えるなら、サカキよりヒイラギやナンテンが適切かもしれません。ちなみに京都では、北東の角に白い玉砂利を敷いて鬼門よけにしています。

なお、桃も「仙木で霊力があり、邪気を払う」と考えら、鬼門に植えられることがある。姫路城では、鬼門・裏鬼門にある建物の鬼瓦に桃があしらわれているそうだ。

風水的には、サカキを植える場所はどこがいい?

日本の家相学と中国発祥の風水は、似て非なるものだ。どちらも「住まいの吉凶」を扱う思想だが、哲学・価値観・技法において違いがある。

風水では、万物を「木・火・土・金・水」の五行に分類して考える。サカキは植物であり「木」の気を持っているので、この性質を生かして運気を伸ばすとよい。

「木」の気を持つサカキと相性が良い方角は、以下のとおりだ。

木の気を持つ方角。木の気によって気力が活性化して、成長運・発展運UP。
南東 木の気を持つ方角。木の気が外交力に作用して、商売運・信用力UP。
火の気を持つ方角。相生関係から、社交性や人気運、才能の開花が期待できる。

木は火を助ける(木生火:燃えて火を生む)ため、助け合い運気を強める相生関係にある。だから南に「木」の気を持つ植物を置くと、「火」の気を強められる。

ホリカワ
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ただし、サカキは強い日差しを嫌う点は留意したいです。南にサカキを植える場合は、明るい日陰になる場所を選ぶ必要があります。

一方、五行の観点から見ると、木を鬼門や裏鬼門に植えるのは《あまりよくない行為》になる。

鬼門(北東)や裏鬼門(南西)の方角は「土」の気を持つ。「木」は「土」の養分を吸い取るため、土から嫌われる「相克」の関係にある。

ホリカワ
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また、安定を司る「土」と成長を司る「木」は、互いに気を相殺し合います。

相克を回避するには、「木」と「土」の両方と相生関係にある「火」の気を持つものに仲裁してもらうのがよい。たとえば、以下のようなものを一緒に配置しよう。

  • 火のような光源(照明やキャンドルなど)
  • 炎を象徴するもの(鳳凰や太陽の絵など)
  • 赤い色のもの(赤い鉢や赤いオブジェなど)
  • とがった形状のもの(タワー型のオブジェなど)

このように、家相と風水を両立させるのは難しい側面がある。どちらか気になるほうを優先するとよいだろう。

火の気を持つアイテムに仲裁してもらいながら、サカキを鬼門に配置するのもよい方法だ。

まとめ:サカキ(榊)を庭に植えてはいけない?

さいごに、本稿のおさらいをしておこう。

サカキを庭に植えてはいけない理由は?

サカキは神聖な木であるため、身分制度があった時代は「庶民が植えるのは不敬」とされた。現代ではそのように考える人は少ないので、とくに問題ない。詳しくは以下をご覧いただきたい。

「サカキ(榊)を植えてはいけない」と言われる理由と対処法

サカキの魅力や栽培するメリットは?

サカキは神聖かつ縁起のよい植物で、魔よけになる。また、常緑で淡黄色の花を咲かせるため、観賞や生垣に適している。丈夫で育てやすいところも魅力だ。詳しくは以下をご覧いただきたい。

サカキ(榊)の魅力と栽培するメリット

サカキを鬼門に植えてもいい?

家相的には、サカキを鬼門に植えると魔よけになる。しかし、神さまに対して不敬と考える人もいる。また、風水的には鬼門に木を植えるのはあまりよくない。詳しくは以下をご覧いただきたい。

サカキ(榊)のよくある疑問

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ホリカワ ダット

ホリカワ ダット

住宅分野専門のSEOライター・ブロガー。インテリアコーディネーター1級カラーコディネーター (商品色彩) の資格保有。ランサーズ認定・不動産ライタースペシャリスト。庭づくりや外構のポイントを、わかりやすく解説します。

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