
コキアは「ふわふわとした丸い形がかわいい」「紅葉が美しい」と人気で、多くの人に愛されている植物だ。しかし、その一方で「庭に植えてはいけない」と言われることもある。
じつは、コキアには「意図せず増えすぎてしまう」「台風で倒れやすい」などのリスクがある。それでも、コキアの魅力は捨てがたい。トラブルなく育てる方法を知りたい方が多いだろう。
本稿では、コキアを庭に植えてはいけないと言われる理由やその対処方法をご紹介する。本稿をヒントに、コキアの魅力を生かした素敵なガーデニングライフを楽しんでみてほしい。

コキア(ハナホウキギ)を庭に植えてはいけない理由と対処法

さっそく、コキアを庭に植えてはいけないと言われる3つの理由をご紹介する。
- こぼれ種で大量に増えてしまう
- 大きく育ちすぎて、手に負えなくなる恐れがある
- 強風に弱いため、台風シーズンの配慮が必要
それぞれ、詳しく解説しよう。
こぼれ種で大量に増えてしまう
コキアは、こぼれ種で大量に増えてしまう。そのため、適切な対策を講じる必要がある。放っておくと、翌年にこぼれ種から大量に発芽してしまう。
意図せず庭中にコキアが広がると、他の植物の生育を妨げてしまう恐れがある。そうならないように、以下のようなこぼれ種対策を実施したい。
- 種を収穫する
- 専用エリアを設ける
- 鉢植えにする
こぼれを防ぐためには、花が終わったあとにしっかりと種を収穫するとよい。こぼれ種さえ拡散しなければ、コキアが増えすぎることはない。
コキア専用のガーデニングエリアを設けるのも、よいだろう。万が一、エリア外でこぼれ種が発芽した場合は、芽の内に取り除こう。
また、鉢植えにすることで、こぼれ種が落ちるリスクを最小限に抑えられる。
大きく育ちすぎて、手に負えなくなる恐れがある
コキアは生育旺盛で、まれに1m以上の大きさになることもある。増えすぎたり大きく育ちすぎたりすると手に負えなくなる恐れがあるので、注意したい。
コキアの生育は、こぼれ種と同様に、適切な対策を講じることで管理可能だ。たとえば、以下が有効だろう。
- 鉢植えにする
- 専用エリアを設ける
コキアを鉢植えにすることで、大きさをコントロールしてコンパクトに育てられる。鉢植えなら、台風等で倒伏の心配があるときは鉢ごと移動することもできる。
専用エリアを設けるのも、よいだろう。コキア専用のガーデニングエリアを設ければ、万が一育ちすぎたとしても、他の植物への影響を最小限に抑えられる。
なお、コキアは一年草だ。だから、成長しすぎた株に毎年手を焼くことはない。紅葉が終わり枯れたあと、株を取り除けばいい。
強風に弱いため、台風シーズンの配慮が必要
コキアは強風に弱いため、特に台風シーズンには倒伏しないように注意が必要だ。
なぜ、コキアは強風で倒れやすいのだろうか?—— それは、以下のような特性があるからだ。
- 背が高く横に広がる特性があるため、風を受ける面積が大きい
- 茎が細長く柔らかいため、強風にあおられると折れやすい
- 根が浅いため、強風で引き抜かれたり倒伏したりしやすい
とりわけ、大きく成長したコキアは風の影響を受けやすい。国営讃岐まんのう公園が被害状況を発信されていたので、ご紹介しよう。
台風接近のため、臨時休園しておりましたが、明日より通常開園致します。園内のコキアは、雨風に揺られ、少しななめになってしまったり、割れてしまったものもありますが、おおむね元気です!
出典:X (旧Twitter)
台風シーズンにコキアを守るには、以下のような対策が有効だ。
- 支柱を立てる
- 鉢植えにする
台風シーズン前に支柱を立てておくと、倒伏を防ぎやすくなる。大分県杵築市にある《るるパーク (大分農業文化公園)》の公式サイトが、作業の様子を掲載されているので参考にしたい。
鉢植えにするのも、有効だ。鉢植えなら、台風や強風のタイミングで室内に避難させられる。

コキア(ハナホウキギ)の魅力と、庭に植えるメリット

つづいて、コキアを庭に植えるメリットをご紹介しよう。
コキアは魅力的な植物だ。こぼれ種や倒伏などのリスクさえ対策できれば、お庭でコキアを満喫できるだろう。
育てやすく手間がかからない
コキアは、育てやすく手間がかからない植物だ。丈夫で病害虫にかかりにくいので、手入れに関して細心の注意を払わなくてよい。
コキアなら、特別な土壌や肥料も必要ない。日当たりと水はけのよい場所に植えれば、ある程度放っておいても問題なく育つ。
剪定も、ほぼ不要だ。自然に、こんもりとした樹形になる。枝が乱れている部分を見つけたときに、カットして形を整える程度でよい。

コキアは、主根が垂直に伸びる直根性の植物だ。直根性の植物は、根を傷つけると、大きなダメージを受けてしまう。種から直まきするとよいだろう。
苗を定植する際は、根を傷付けないように注意しよう。あとは、日当たりと水はけに気をつけ、こぼれ種対策をすれば初心者でも管理できる。
あなたも、コキアを庭に植え、手間をかけずに美しい紅葉を楽しんでみてはいかがだろうか?
丸い樹形が魅力的で、長期間楽しめる
コキアには、以下のような魅力がある。
- 独特の丸い樹形が可愛らしい
- 長い期間にわたって観賞できる
他の植物にはない丸くこんもりとした独特の樹形は、コキア最大の魅力と言っても過言ではないだろう。まるでフワフワの毛玉のような姿は、庭のアクセントとして存在感を発揮してくれる。
鑑賞時期が6~11月と長いのも、コキアの魅力と言える。夏は鮮やかな緑、秋は燃えるような赤、と季節によって違う表情を楽しめる。春から晩秋まで庭を彩ってくれる、魅力的な植物だ。

コキアは「ホウキギ」とも呼ばれている。枯れたあと、ホウキを作って楽しめるのだ。草花が少ない夏場のアクセントに、秋の紅葉をより鮮やかに、枯れたあとはホウキに —— と、大活躍である。
美しい紅葉を楽しめる
先述のとおり、コキアは9月から11月頃になると、鮮やかな赤やオレンジに紅葉する。「バーニングブッシュ」と呼ばれるほど、鮮烈な色彩だ。
たくさんのコキアが植わっていると、その紅葉は圧巻の美しさで、見る者を魅了する。以下の場所でコキア園を見られるので、庭に植える前に見に行ってみてはどうだろうか?
コキアは、紅葉までの色の変化もステキだ。6月頃から緑の葉を茂らせ、徐々に紅葉していく。緑から赤へと変化していく過程のグラデーションが、目を楽しませてくれる。
カエデなどの樹木の紅葉は有名だが、これほど美しく紅葉する一年草は珍しい。茎から赤くなるコキアならではの魅力と言えるだろう。

園芸の初心者必見!コキア(ハナホウキギ)の植え方・育て方

最後に、コキアの植え方や育て方のポイントをご紹介しよう。園芸の初心者の方の参考になれば幸いだ。
コキアを植えるのに適した場所
コキアを植える際、選びたいのは以下の場所だ。
- 日当たりのよい場所
- 風通しのよい場所
- 水はけのよい土壌
コキアは日光を好む植物だ。日なたに植えよう。日陰になる時間が長い場所で育てると、枝葉が弱々しくなり、紅葉の見栄えが悪くなる。
さらに、風通しのよい場所なら、湿気がこもらず病害虫の発生を抑えやすいです。
また、コキアは過湿を嫌う。水はけのよい土壌に植えよう。植える場所の土の水はけが悪い場合は、以下の方法が有効だ。
- 庭に傾斜を付けることで、表層に溜まる水を流す
- 固くなった土を耕し、砂利や腐葉土を混ぜてあげる
鉢植えの場合は、赤玉土と腐葉土を7:3くらいで混ぜた用土を使うとよいだろう。市販の草花用土を使うと、手軽に準備できる。
コキアの植え方と、植える際の注意点
コキアの植え方と、植える際の注意点をご紹介しよう。
植え方
コキアの植え方の順序は、以下のとおりだ。
- 日当たりと風通しのよい場所を選ぶ
- 水はけのよい土壌を用意する
- 植え付け前に土づくりをする
- 根を傷付けないように苗を植え付ける
地植えの場合は、植え付けの2週間前までに植え穴を掘り、腐葉土を2~3割混ぜ込んで寝かせておくとよいだろう。肥沃地では株が軟弱になったり徒長したりするので、注意したい。

コキアの根は繊細で、傷付くのを嫌う。7月から9月ごろ、できるだけ苗が小さいうちに、根を傷付けないように注意しながら植え付けを済ませるとよいだろう。
種から育てる場合は、温暖で日当たりのよい場所にまこう。種まきの適温は20℃以上。適期は5月~6月だ。7月頃までまけるが、観賞期間が短くなる。
注意点
コキアを植える際は、他の植物とのバランスを考慮して配置しよう。コキアは横に広がりやすいだけでなく、まれに1mを超える背丈になることがある。

真夏の直射日光や西日にも注意しよう。コキアは日光を好むが、真夏の強すぎる直射日光や西日が長時間当たると、葉焼けの原因になる。
繰り返しになるが、こぼれ種からの発芽にも注意が必要だ。コキアは発芽率が高く、こぼれ種から大量に発芽する。
育て方のコツ(剪定・水やり・害虫対策)
コキアの育て方のコツをご紹介しよう。
剪定のコツ
コキアは自然に丸い形に育つため、基本的には剪定を必要としない。
上に伸びすぎた場合や、横に広がりすぎて他の植物の邪魔になった場合は、カットして丸い形を保とう。密集しすぎた枝を間引いて、株の内部まで日光が当たるようにすることも大切だ。
水やりのコツ
コキアは多湿を嫌う植物だ。土が乾いてから、たっぷりと水を与えよう。
地植えの場合は、乾燥や日照りが続かない限り、雨だけでも育つ。真夏は、朝夕の涼しい時間に様子を見て水やりをしよう。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、鉢底から水が出るくらいたっぷり水を与えるとよい。
害虫対策のコツ
コキアに害虫は、ほとんど見られない。まれに、アブラムシや灰色かび病の害を受ける場合がある。
対策としては、こまめにチェックし、早期発見・早期対策を心がけるとよいだろう。見つけた場合は、すぐに駆除しよう。
専用の薬剤を使えば、ラクに対策できる。アブラムシ退治と肥料やりが、同時にできるものもある。
コキアは鉢植えでも育てられるか
コキアは、鉢植えでも育てられる。鉢植えにすると、以下のメリットが得られる。
- こぼれ種が落ちるリスクを最小限に抑えられる
- サイズをコントロールしてコンパクトに育てられる
- 倒伏の心配があるときに鉢ごと移動できる
- 日照条件がよい場所を選んで置ける
鉢植えなら、庭植えに比べてこぼれ種の管理やサイズのコントロールがしやすくなる。台風等で倒伏の心配があるときに、鉢ごと移動できるのもメリットと言えるだろう。
また、日照条件がよい場所を選んで置けるところも、鉢植えの魅力だ。コキアは日光が大好きな植物であり、日当たりのよい場所に置くことで健康に育てられる。
鉢植えを成功させるコツをご紹介しよう。
- 鉢底ネットと鉢底石を敷いて水はけをよくする
- 水はけのよい土をつくるか、市販の草花用培養土を使う
- 水は土の表面が乾いたらたっぷりと与える
- 植えつけ時と、2か月に1回くらい適量の緩効性肥料を追肥する
ここでご紹介したポイントを押せて、コキアの鉢植えを楽しんでみてはいかがだろうか?
コキアの実の活用方法
コキアの実は「とんぶり」と呼ばれる食品に利用されている。主に東北地方で親しまれている郷土食で、秋田県が特に有名だ。
とんぶりは、見た目がキャビアに似ているため「畑のキャビア」とも呼ばている。ビタミンやミネラルがバランスよく含まれていて、食物繊維も野菜より効率的に採れる。
味わいはクセがなく、プチプチとした食感を楽しめる。そのため、食べ心地のアクセントとして、さまざまな食材に和えたり混ぜたりして用いられている。
なお、とんぶりとして食されるのは「Bassia scoparia (ホウキギ)」という品種の実だ。このコキアはやや縦長で背が高く、紅葉しない。
一方、園芸用として人気なのは「Bassia scoparia var. trichophylla (ハナホウキギ)」という品種だ。こちらは背が低く丸い草姿で、秋に紅葉する。
また、コキアは古くから民間薬としても活用されてきた。漢方薬の材料として使われ、利尿作用や滋養強壮の効果が期待できる。

まとめ:コキア(ハナホウキギ)は庭に植えてはいけない理由とは
さいごに、本稿のおさらいをしておこう。
コキアを庭に植えてはいけない?
コキアを庭に植えても問題ない。ただし、こぼれ種による繁殖はコントロールしたい。栽培するエリアを区切ったり、早めに種を摘み取ったりするとよい。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
コキアの魅力は?
コキアは、こんもりフワフワとした草姿が魅力的だ。観賞期間が長く、夏の爽やかな緑から、秋の燃えるような紅葉まで楽しめる。枯れたあとも、ホウキにできる。詳しくはこちらをご覧いただきたい。