楽天モバイルには「低速モード」なるものがある。いったい、これはどういうモードなのか。どんなふうに使えばいいのか?利用に際して注意点はないのか?
じつは、国内では「低速モード」を利用できない。原則的に、追加料金なしで高速通信を制限なく利用できるので、低速モードを使う理由がない。―― 問題は、海外だ。
本稿では、楽天モバイルの「低速モード」の特徴や使い方、注意点について解説する。海外渡航をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧いただきたい。
楽天モバイルの低速モードとは?
楽天モバイルには「低速モード」と呼ばれる通信速度規制がある。この低速モードのポイントは、以下の3つだ。
- 低速モードでは、インターネットの通信速度が非常に遅くなる
- 日本国内では、とくに気にする必要がない
- 海外では、データ高速モードと低速モードの使い分けが必要
どういうことか、詳しく解説しよう。
低速モードとは(高速モードとの違い)
少し、基本の部分からお話ししよう。モバイルのサービスは、大別すると以下の3つに分類できる。
- 通話
- SMS(ショートメッセージサービス)
- インターネット通信
このうち、通話とSMSは「電話回線」を使い、インターネット通信は「インターネット回線」を使う (インターネット回線で通話する方法もある)。
楽天モバイルでインターネット通信をおこなう場合、以下の2種類のモードが使える。
- データ高速モード
- 低速モード
データ高速モードは、高速で通信できるが「高速データ容量 (高速通信可能なデータ容量)」を消費する。そして、規定の容量(2GB)を使い切ると低速モードに切り替わる。
「低速モード」は以下の通称であり、正式名ではない。
- 高速通信できるデータ容量(2GB)をすべて消費した状態
- 手動で「データ高速モード」をオフにした状態
上述の状態になると、通信速度が制限され、送受信に時間がかかるようになる。
ただし、高速通信できるデータ容量に「2GB」の制限があるのは、海外のローミングエリアだけだ。国内では高速通信を無制限で利用できるため、低速モードがない (詳しくは後述)。
通信速度
データ高速モードと低速モードは、それぞれどの程度の通信速度が出るのだろうか。
楽天モバイルのデータ高速モードは「ベストエフォート方式」を採用しているので、パフォーマンスは環境と状況により変化する。都度、確認するしかないだろう。
ベストエフォート方式では、回線業者は通信速度を保証していない。以下のような条件によって、基地局と携帯端末がおこなう通信の品質が左右されるからだ。
- 基地局までの距離や途中の障害物
- ネットワーク回線の混み具合
基地局とは、携帯端末と直接電波のやり取りをする場所のこと。鉄塔タイプやビル屋上設置タイプ、地下やビルなどの屋内設置タイプなどがある。
基地局と携帯端末の通信品質は、自分で確かめるしかない。以下の記事で「アメリカ・韓国・台湾・中国・タイ」で利用した方の口コミを集めて載せているので、参考にして欲しい。
楽天モバイルのデータ高速モードとは?通信速度や提供エリアについて
楽天モバイルには「データ高速モード」なるものがある。いったい、これはどういうモードなのか。どんなふうに使えばいいのか?利 ...
一方、低速モードでは、通信速度の最大が「128kbps」に制限される。この速度で満足に送受信できるのは、テキストメッセージくらいだろう。
料金
料金は、どうだろうか ―― 。日本国内では、基本料金のみで高速通信を利用できる。海外のローミングエリアでも、2GBまで追加料金なしで利用可能だ。
2GBをすべて消費してしまい「低速モード」になった場合は「500円(不課税)/1GB」でチャージできる。チャージすれば、再びデータ高速モードを使えるようになる。
日本国内での低速モードの扱いと、海外での適用条件
繰り返しになるが、日本国内では全国の通信エリアで高速通信を無制限で利用できる。だから「低速モード」の概念がなく、手動で強制的に切り替えても低速にならない。
しかし、2023年5月までは国内でも低速モードを利用できた。どういうことか、説明しておこう。
国内:以前(Rakuten UN-LIMIT VII)の料金プラン
「Rakuten UN-LIMIT VII」プランは、ローミングエリア(パートナー回線エリア)内でデータ高速モードを使用する際、「月5GBまで」に制限されていた。制限を超えると、低速モードになる。
ローミングとは、契約している通信事業者のサービスエリア外でも、他の事業者の設備を利用して通信できるようにする仕組みのこと。楽天モバイルの場合は、auの電波を利用させてもらっている。
国内:現行の「Rakuten最強プラン」
2023年6月1日から「Rakuten最強プラン」に変わり、国内ではローミングエリアでも高速データ通信を無制限で利用できるようになった (ただし、公平なサービス提供のため速度を制御する場合がある)。
「Rakuten UN-LIMIT VII」の契約者は、「Rakuten最強プラン」の提供開始にあわせて自動的に移行処理されている。
海外:ローミングエリア(パートナー回線エイリア)
現行の、海外での「低速モード適用条件」もご紹介しておこう。
海外のローミングエリア(海外のパートナー回線エイリア)では、毎月2GBまでデータ高速モードを利用できる。よって、以下の条件に当てはまると「低速モード」になる。
- 高速通信できるデータ容量(2GB)をすべて消費した場合
- 手動で「データ高速モード」をオフにした場合
2GBあれば、かなりの通信ができる。Webサイトなら2000~3000ページくらい。写真なら5000~10000枚くらい。YouTubeなら2~5時間くらい見られる。
とは言え、海外に長期間渡航する場合は、計画的な使い分けとチャージが必要になるだろう。動画コンテンツのヘビーユーザーも、要注意だ。
低速モードの解除方法(高速モードに戻す方法)
低速モードを解除するには、どうすればいいのだろうか?―― 解説しておこう。
高速通信できるデータ容量(2GB)をすべて消費した場合
高速通信できるデータ容量(2GB)をすべて消費した場合は「500円(不課税)/1GB」でチャージできる。データをチャージする方法は、以下のとおり。
STEP.1
スマホの場合は「my 楽天モバイル」アプリを起動する。
Webの場合は、my 楽天モバイル「ホーム」の「データチャージ」画面を開き「データチャージへ進む」をタップしてログインする。
STEP.2
「データチャージ」をタップする。
楽天モバイルを2回線以上契約している場合は、画面上部へスクロールし、手続きを行う電話番号が表示されているか確認しておこう。
STEP.3
チャージするデータの容量を選択して「購入する」をタップする。
チャージした高速データ通信容量には、有効期限がある。購入日を含めて「31日間」有効だ。
有効期限の確認方法も、ご紹介しておこう。
STEP.1
スマホの場合は「my 楽天モバイル」アプリを起動して、画面右上のメニュー(3本線)をタップしたあと「申し込み履歴」をタップする。
Webの場合は、my 楽天モバイルの「申し込み履歴」画面を開き「申し込み履歴へ進む」をタップしてログインする。
STEP.2
データチャージした申し込み履歴を選択する。
STEP.3
申し込み日を確認する。
手動で「データ高速モード」をオフにした場合
手動で「データ高速モード」をオフにした場合は、再びデータ高速モードに戻せばいい。切り替え方法は、以下のとおり。
STEP.1
スマホの場合は「my 楽天モバイル」アプリを起動する。
Webの場合は、my 楽天モバイル「ホーム」の「高速データ容量」画面を開き「高速データ容量へ進む」をタップしてログインする。
STEP.2
「データ高速モード」をタップし、ON/OFFを切り替える。
楽天モバイルを2回線以上契約している場合は、画面上部へスクロールし、手続きを行う電話番号が表示されているか確認しておこう。
他社の低速モードとの比較(海外で利用する場合)
楽天モバイルの低速モードと、他社の低速モードに違いはあるのだろうか?―― 海外で利用する場合の最大通信速度に着目すると、以下のような差がある。
サービス名 | 最大通信速度 |
---|---|
楽天モバイル | 128Kbps |
NTT docomo アハモ | 1Mbpsまたは128Kbps |
KDDI UQモバイル | 128Kbps |
SoftBank ワイモバイル | 128Kbps |
各社とも、低速モードになると「最大128Kbps」まで通信速度が低下してしまう。アハモのみ、以下の条件分岐がある。
アハモの低速モード
- 当月の利用可能データ量を超えた場合、最大1Mbpsとなる
- 滞在期間が2週間を超えた場合、最大128Kbpsとなる
この情報だけ見ると、サービスごとの差はあまりないように感じる。しかし、海外で高速モードを利用するための料金も考慮すると、それぞれのサービスの個性が見えてくる。
楽天モバイルとアハモは、海外でも一定の通信量まで追加料金なしで利用できる。UQモバイルとワイモバイルは、有料のオプションを追加する必要がある。
詳しく見ていこう。
楽天モバイル(Rakuten Mobile)
データ高速モード | 2GBまで追加料金なしで利用可能 |
---|---|
低速モード(データ高速モードOFF) | 通信速度が最大128Kbpsに低下する |
楽天モバイルを海外で使う場合は、データ高速モードを2GBまで追加料金なしで利用できる。2GBを超えた場合でも「500円(不課税)/1GB」でチャージすることで、再びデータ高速モードを利用できる。
低速モードの使用中は、基本的に無料でインターネット通信を利用できる。ただし、低速モードも高速モードも、送受信をおこなうとデータの利用量が加算される点は留意が必要だ。
データの利用量が増えれば、基本料金が上がる。楽天モバイルの基本料金(Rakuten最強プラン)は、データの利用量に応じて段階的に上がる仕組みになっているのだ。頭の片隅に置いておこう。
Rakuten最強プランの基本料金
3GBまで | 980円(税別)/月 |
---|---|
3GB超過後20GBまで | 1,980円(税別)/月 |
20GB超過後 | 2,980円(税別)/月 |
NTT docomo アハモ(ahamo)
高速モード | 追加料金なしで利用可能(2週間以内、かつ月間利用可能データ量の範囲内) |
---|---|
低速モード | 利用可能データ量を超えた場合は、通信速度が送受信時最大1Mbpsとなる |
滞在期間が2週間を超えた場合は、通信速度が送受信時最大128Kbpsとなる |
アハモは、月間利用可能データ量(20GB)の範囲内なら追加料金なしで高速モードを利用できる。ただし、以下のとおり「2週間以内」の制約がつき、チャージもできない。
海外で最初にデータ通信を利用した日(日本時間)を起算日として15日経過後の日本時間0時以降に、海外では通信速度が送受信最大128kbpsとなります。
本速度制限は、利用可能データ量を追加購入しても日本に帰国しデータ通信を行うまで解除されませんので注意してください。
なお、アハモには「低速モード」に相当する機能がなく、ユーザーが意図的に切り替えることはできない。規定に基づき自動で切り替わる仕組みになっている。
KDDI UQモバイル(UQ mobile)
高速ターボ | 海外ダブル定額 | 約24.4MBまで「1,980円 (不課税)/日」、その後どれだけ使っても「2,980円 (不課税)/日」 |
---|---|---|
世界データ定額 | 「480円 (不課税)~/日」で料金プランごとの利用量上限容量まで利用可能 | |
高速ターボOFF(節約モード) | 通信速度が最大128Kbpsに低下する |
KDDIは、海外渡航者用にふたつの有料プランを用意している。
なにも操作しなければ、端末のデータローミング設定がONになっていると、渡航先で自動的に「海外ダブル定額」に切り替わる。
一方「世界データ定額」は、専用アプリから日本国内で事前に予約設定するか、渡航先で利用開始ボタンを押すことで切り替わる。
「世界データ定額」は、渡航地域や早期予約の有無で料金が変わる。料金プランごとの利用量上限容量まで高速で通信できて、上限を超えると通信速度が最大128Kbpsに低下する。
なお、UQモバイルの「高速ターボOFF (節約モード)」モードは、通信データの利用量が加算されない。基本料金が上がる心配は、不要だ。
ちなみに、一部のプラン(トクトクプラン、コミコミプラン)では「節約モード」を利用できないので、注意が必要である。
SoftBank ワイモバイル(Y!mobile)
高速モード | 海外パケットし放題 | 「2,980円 (不課税)/日」で一日中使い放題 |
---|---|---|
海外あんしん定額 | 「980円 (不課税)~/日」で3GBまで利用可能 | |
低速モード | 通信速度が最大128Kbpsに低下する |
SoftBankも、ワイモバイルを利用する海外渡航者用にふたつの有料プランを用意している。
なにも操作しなければ、端末のデータローミング設定がONになっていると、渡航先で自動的に「海外パケットし放題」に切り替わる。
一方「海外あんしん定額」は、事前に専用サイトから申し込み、渡航先で利用開始ボタンを押すことで切り替わる。
「海外あんしん定額」は、渡航先によって料金が変わる。3GBまで高速通信を利用できて、上限を超えると通信速度が最大128Kbpsに低下する (一部の国では利用停止)。
なおワイモバイルは「低速モード」に相当する機能がなく、規定に基づき自動で切り替わる。また、海外で利用する場合は、あらかじめ「世界対応ケータイ」に加入しておく必要がある。
楽天モバイルの低速モードのメリット・デメリット
つづいて、楽天モバイルの低速モードのメリット・デメリットをご紹介しよう。
デメリットは、通信速度が制限されること
低速モードのデメリットは、ずばり通信速度が128Kbps以下に低下することだ。
Kbpsは「kilobit per second」の略で「1秒間に何ビットのデータを転送できるか」を表わす単位だ。この通信速度でまともにできることと言えば、テキストメッセージの送受信くらいだろう。
それから、以下がなんとか使えるかもしれないない。
- 音声通話
- 地図アプリ
- X (旧Twitter)
- 低音質の音楽再生
以下は、ほぼ使いものにならないだろう。
- ゲーム
- 動画視聴
- ビデオ通話
- Webサイトの閲覧
- 音楽ストリーミング
上述のデータ送受信をおこないたい方は、低速モードにならないように気を配っておく必要がある。
メリットは、データ通信量を節約できること
次は、メリットをご紹介しよう。
低速モードは、最大128Kbpsに制限されてしまう。しかし、見方を変えると、データ通信量を節約できるとも言える。
たとえば、こんな使い方をされている方がいる。とても参考になる利用方法だ。
海外で楽天モバイルを使って「マジで通信速度遅すぎw」って言ってる方へ。「データ高速モード」をONにしてますかー?これしないと他社と同じくらいサクサク動かないんですよ?
でもこの「低速」を逆手に取ったイチオシの使い方が……逆にデータ高速モードをOFFにするんです。するとデータが全然減らないんです!余計なデータを消費せずに済むし、無駄にSNSも見なくて済む。
私は外出中は基本OFFにして、Wi-Fiを繋げる場所で連絡や調べ物をしています。本当に必要なときだけONにしてる。
出典:X(旧Twitter)
手動でデータ高速モードをOFFにして、必要なときだけONに戻す ―― そのような使い方をすると、Wi-Fiのあるところ以外はあまりスマホを使わなくなるのだ。
せっかく海外に渡航しているのだから、スマホ画面より目の前に広がる世界を見る方がいいだろう。2GBの高速通信容量も温存できるので、一石二鳥だ。
海外で低速モードになるのを避けるコツ
最後に、海外で低速モードになるのを避けるコツを3つご紹介して終わりたいと思う。
- 高速通信が不要なときは、データ高速モードをオフにしておこう
- 通知設定をオンにして、通信量を管理しよう
- 可能な限りWi-Fiを利用しよう
順番に、詳しく解説しよう。
高速通信が不要なときは、データ高速モードをオフにしておこう
繰り返しになるが、高速通信が不要なときは、手動でデータ高速モードをOFFにしよう。どうしても必要なときだけ、ONにすればいい。
Wi-Fiのあるところでネット閲覧やSNSの送受信をおこなえば、ムダなデータ利用を自制できる。高速データ容量を温存できるだけでなく、基本料金も抑えられるだろう。
どのくらい使ったか、こまめにチェックすることも大切だ。「my 楽天モバイル」アプリで、高速通信できる残容量を確認できる。
アプリのバックグラウンド通信も、オフにしておこう。アプリは、更新や情報取得のために自動で通信することがある。気づかないうちに、高速データ容量を消費してしまうのだ。
バックグラウンド通信の停止方法は、以下のとおり。
iOS
STEP.1
「設定」アプリから「一般」をタップ
STEP.2
「Appのバックグラウンド更新」をタップ
STEP.3
「Appのバックグラウンド更新」を「オフ」または「Wi-Fi」にする
Android
STEP.1
「Playストア」で右上の自分の名前をタップ
STEP.2
「設定」から「ネットワーク設定」をタップ
STEP.3
「アプリの自動更新」を「オフ」または「Wi-Fi接続時」にする
通知設定をオンにして、通信量を管理しよう
海外ローミングエリアで利用中は、以下の場合にメール、およびSMSで通知することができる。
- 高速データ容量の残容量が400MBを下回った場合
- 高速データ容量を使い切った場合
通知をONにする設定は、以下のとおり。
STEP.1
スマホの場合は、「my 楽天モバイル」アプリを起動する。Webの場合は「my 楽天モバイル」にログインする。
STEP.2
画面右上のメニュー(3本線)をタップし、「お知らせ設定」をタップする。
STEP.3
「通信容量の残容量通知メール」をONにし、「変更する (保存する)」をタップする。
なお、通知は設定を「OFF」から「ON」に切り替えた翌月より反映される。海外渡航される方は、前月までに設定しておこう。
可能な限りWi-Fiを利用しよう
大容量のデータを送受信する場合は、なるべくWi-Fiがあるところでおこなおう。
たとえば、以下はWi-Fi環境で利用することをおすすめする。
- ゲーム
- 動画視聴
- ビデオ通話
- Webサイトの閲覧
- 音楽ストリーミング
ただし、パスワードなしのフリーWi-Fiは安全性が低い。個人情報や暗証番号などの入力は、避けるべきだろう。
複数人で旅行や出張に行く場合は、ワリカンでモバイルWi-Fiルーターをレンタルするのもよい。
人気の「GLOBAL WiFi」なら「約700~3200円/日」でレンタルできる。4人グループなら、1人当たり「約200~800円/日」でシェアできる。
まとめ:楽天モバイルの低速モードをうまく活用しよう
さいごに、本稿のおさらいをしておこう。
低速モードとは?
低速モードとは、高速通信できるデータ容量(2GB)をすべて消費した状態のこと。インターネット通信の速度が、最大128Kbpsに制限される。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
低速モードのメリットは?
低速モードのメリットは、データ通信量を節約できること。手動でデータ高速モードをOFFにして、高速データ容量を温存できる。必要なときだけONに戻せばいい。詳しくはこちらをご覧いただきたい。