楽天エリアの回線エリアマップを見るとサービス圏内のはずなのに、なぜかつながらない体験をしたことがないだろうか?もしくは、データ通信が非常に遅く、イライラした経験はないだろうか?
じつは、楽天モバイルの回線エリア内でも繋がらない、あるいは通信が遅いことがある。これは電波の特性によるもので、原因を理解しているとすぐに対処方法を思いつけるだろう。
本稿では、楽天モバイルの回線エリアなのにつながらない原因や対処法をご紹介する。イライラせずに済むように、覚えておきたい知識だ。楽天モバイルライフを楽しむために、ご活用いただきたい。
楽天回線エリアなのに遅い・つながらない理由と対処法
楽天モバイルは、通信できるエリアを公表している。しかし、その「楽天回線エリア」内であっても遅い、あるいはつながらないことがある。
なぜ、そんなことになるのか ―― その答えは、電波の性質を知ると見えてくる。そして、電波の性質が分かれば、解決策も見えてくる。
たとえば、電波にはこんな性質がある。
- 直進しながら弱くなる(減衰)
- 金属やコンクリートなどにあたって跳ね返る(反射)
- 紙や木、ガラスは減衰しながら通り抜ける(透過)
- 障害物を回り込む(回析)
- 電波同士でけんかする(干渉)
上述の特性にのっとる形で、回線エリア内でも遅い・繋がらない場所が出てくる。もう少し、具体的に見ていこう。
室内・屋内で電波が悪い
電波は、金属やコンクリートなどにあたって跳ね返る (反射)。一部の素材は通り抜けられるが (透過)、通り抜けるたびに弱くなる。
だから、鉄筋コンクリートのビルの中や家の奥まった場所では、電波がつながりづらくなるのだ。
また、基地局からの電波は携帯電話に届くのに、携帯電話からの電波が基地局に届かない(受信できるのに発信できない)ことがある。たとえば、こんな感じだ。
- 電話に出たら切れてしまった
- 相手の声は聞こえるのに、こちらの声が届かない
この現象は、携帯電話から出ている電波と基地局から出ている電波の強さが違うから起こる。携帯端末より基地局のほうが、出力の大きい電波を出せるのだ。
いずれの場合も、建物から出てみる、あるいは窓際に寄ってみることで解決する場合がある。
通信障害が発生している
楽天回線エリアなのに遅い、あるいはつながらないとき、通信障害が発生している場合がある。公式サイトの「障害情報」をご確認いただきたい。
携帯電話の電波は、雨や霧に当たり減衰する。だから、大雨や台風の日は通信障害が発生しやすい。とりわけ、5Gエリアの一部で利用している「ミリ波」と呼ばれる電波は、雨に弱い。
通信障害については、障害が解消するのを待つ(雨がやむのを待つ)しかないだろう。
一方、機種本体の不具合によって通信障害が発生している可能性もある。一度、スマホを再起動してみるといいだろう。
同時に大人数で使用している
通信事業者(キャリア)は、それぞれ総務省から許可された周波数帯(バンド)の電波を利用している。
周波数帯は電波の通り道、言い換えるとデータの通り道のようなものだ。よって、以下のような特徴を持っている。
周波数帯(バンド)の特徴
- 帯域が広いほど、大量のデータを送れる
- 大人数が同時に利用すると、渋滞して遅くなる
この渋滞のことを「輻輳」と言いい、発生すると、通話が繋がりにくくなったりネット回線が遅くなったりする。とくに、お正月や大災害時に発生しやすい。
ちなみに、楽天モバイルでは2022年9月4日にソフトウェアの不具合から輻輳が発生している。
輻輳は通信事業者側の問題であり、ユーザーにできる解決策は限られる。ユーザー側ができることは、シンプルに以下の行動を取るくらいだろう。
- 混雑が解消されるのを待つ
- 混雑していないエリアへ移動する
通信システムの「5G」と「4G」の両方を使える地域なら、ネットワークの切り替えも試してみたい。以下の操作で、切り替え可能だ。
iOS | 設定 > モバイル通信 > SIM > 音声通信とデータ |
---|---|
Android | 設定 > ネットワークとインターネット > SIM > 優先ネットワークの種類 |
なお、Androidはバッテリーセーバーをオフにしておく必要がある。バッテリー セーバーをオンにすると、5G利用可能エリアにいても4Gでデータ通信をおこなう場合があるのだ。
デュアルSIMをご利用の方なら、もう一方の回線で通信できないか試してみるのもよいだろう。
楽天回線エリアに嘘がある?
楽天回線エリア内であても、必ずつながる保証はない。先述のとおり、建築物や障害物の影響で電波が届かない場所がある。雨や霧などの悪天候で、繋がらない場合もある。
それに、回線エリアマップは、基地局の位置から電波の飛距離を算出して色づけしているに過ぎない。実際に現地に行って電波状況を確認したわけではないのだ。
楽天モバイルも、公式サイトでこう書いている。
サービスエリアは計算上の数値判定に基づき作成しているため、実際の電波状況と異なる場合があります。またサービスエリアは予告なく変更となる場合があります。
出典:楽天モバイル 通信エリア
この作成方法や信頼性は、他社でも同様だろう。現在の技術では、回線エリアマップは「目安」と考えるしかなさそうだ。
データ通信量超過による調整?
現行の「Rakuten最強プラン」は、高速で通信できる容量に制限がない。パートナー回線エリア(au)も、原則的に容量の制限なしで使える。
ただし「公平なサービス提供または環境により速度低下する場合あり」としている。
回線の通信規制は、主に次の3つでおこなわれるようだ。
- 通信速度制限
- 通信の最適化
- 輻輳制御
通信によるトラフィック(流れるデータ量)がネットワーク帯域の上限を超えそうなとき、通信量や通信速度が制限される。都市部の人口密集地では、慢性的に、特定の時間に見られる現象だ。
また、画像や動画は表示速度を早めるために最適化(圧縮・伝送効率の高いコーデック形式に変換)されるようだ。輻輳状態に陥りそうなときも、送受信に規制がかかる場合がある。
楽天回線エリアなのにパートナー回線になる場合はどうする?
楽天モバイルは、楽天回線エリア内にいてもパートナー回線(au)をつかむことが少なくない。―― なぜか?
楽天回線は、2023年10月23日まで「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯を持っていなかった。ようやく総務大臣より利用の許可を受けたものの、まだプラチナバンド帯域の電波は発射されていない。
プラチナバンドとは
楽天モバイルは、auから800MHz帯を借りている。よって、両社の回線エリアが重なっていて、障害物の影響で楽天回線が不安定な状況では、安定しているパートナー回線をつかんでしまうのだ。
また、以下のインタビュー記事によると、iPhoneX以前の機種あるいはAndroidの古い機種は、auの電波を優先してつかんでしまうケースがあるようだ。
楽天最強プランでは、とくに気にしなくてよい
では、パートナー回線につながってしまったら、どうすればいいのだろうか?―― 結論から言うと、気にしなくていいのではないだろうか。
現行の「Rakuten最強プラン」は、パートナー回線エリアでも高速データ通信を無制限で利用できる。よって、通信量を気にすることなくインターネットを使える。
だから、現在はローミングを気にする方はほぼいないだろう。
ローミングとは
ちなみに、以前の料金プラン(Rakuten UN-LIMIT VII)では、パートナー回線で高速通信できるデータ量の上限が「5GB/月」に制限されていた。制限を超えると、低速モードになる。
しかし、Rakuten最強プランにリニューアルされたあとは、先述のとおりこの制限が撤廃されているのだ。
ただし、海外のローミングでは、高速通信できるデータ量の上限が「2GB/月」に制限されている。制限を超えると低速モードになるので、海外に渡航する予定の方は運用方法を検討しておくとよい。
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楽天回線とパートナー回線の違い(4G周波数帯)
楽天回線とパートナー回線には、どのような違いがあるのだろうか?―― 結論から言うと、電波の周波数が異なる。
エリア | バンド呼称 | 上り(送信)周波数帯 | 下り(受信)周波数帯 |
---|---|---|---|
楽天回線 | Band 3 | 1730~1750MHz | 1825~1845MHz |
パートナー回線 | Band 18/26 | 815~830MHz | 860~875MHz |
上述のとおり、周波数はパートナー回線より楽天回線のほうが高い。電波は、周波数が高くなると以下の特徴を示す。
- 直進性が強くなる
- 障害物に弱くなる(回り込みにくくなる)
- 電波到達距離が短くなる
- 伝達できる情報量が多くなる
つまり、楽天回線はパートナー回線に比べて「障害物が多いところでは、品質低下が起こりやすい」と言える。また、電波到達距離が短いため、多くの基地局を設置する必要がある。
他社は、総務省から複数の電波帯域の使用許可を得ている。しかし、楽天モバイルは自前の「band 3」とauから借りている「Band 18/26」のみだ。よって、これまで電波品質が課題だった。
2023年10月23日に、ようやく「715~718MHz/770~773MHz」帯域の割当が認定された。上り・下りとも「3MHz」ずつの狭い帯域ではあるが、今後に期待したいところだ。
楽天回線エリアとパートナー回線エリアの確認方法
「4G LTE」の楽天回線エリアとパートナー回線エリアは、楽天モバイル公式サイトの「サービスエリアマップ」で確認できる。
「5G ミリ波・sub6」のサービスエリアマップも用意されている。
ローミングエリアだけ確認したい場合は、KDDIの「ローミングサービス提供エリア」が分かりやすい。
なお「4G」や「5G」は移動通信システムの世代を表わす。つまり、4G(4th Generation)は第4世代、5G(5th Generation)は第5世代を表わし、あとの世代ほど高速通信ができるようになっている。
それぞれの特徴を表にまとめておこう。
LTE | 「Long Term Evolution」の略。4Gの直前に開発された3.9Gの通信規格。4Gに含めるのが一般的で「4G LTE」と併記されるケースが多い。 |
---|---|
4G | 2015年から提供され始めた通信規格。100Mbpsクラスの高速通信を目指して開発され、50Mbps~1Gbps程度の超高速大容量通信を実現した。 |
5G | 2020年から提供され始めた通信規格。より多くのデータを、より速く運べる。2つの電波「ミリ波」と「Sub6 (サブシックス)」を利用。 |
5Gで利用されている「ミリ波」と「Sub6」の違いも、まとめておこう。
呼称 | ミリ波 | Sub6 |
---|---|---|
帯域 | 28GHz帯 | 3.7GHz帯 |
長所 | 超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続が可能 | 障害物の影響を受けにくく、電波が広域まで届く |
短所 | 障害物の影響を受けやすく、電波の届く範囲が狭い | 通信速度や多数同時接続においてミリ波に劣る |
5Gは4Gに比べて、大容量のデータを高速で送受信ができる。たとえば2時間の映画データのダウンロードなら、4Gで5分かかるところが、5Gなら3秒で終わるくらいの早さだ。
ただし、高速で大容量のデータを送受信できる電波ほど飛距離が短く、障害物にも弱い。サービスエリアマップを見れば、ミリ波のサービスエリアが「スポット」であることが分かる。
現在地の回線がどちらの回線か確認する方法
まさに今、自分が使っている携帯電話が、楽天回線またはパートナー回線のどちらを捕まえているのか知る方法はあるのだろうか?
じつは、iOSは「フィールドテストモード」を使うと接続回線を確認できる。手順は、以下のとおりだ。
- iOSの電話アプリで「*3001#12345#*」を入力
- 発信ボタンを押す
- フィールドテストのメニューが表示される
- RAT欄から「Serving Cell Info」を選択
- 「Band info」に記載されている値を確認
上述の操作をおこない「Band info」の値をご確認いただきたい。もしも、3なら楽天回線(Band3)だ。一方、18(Band18)ならパートナー回線である。
パートナー回線から楽天回線に切り替える方法
一度パートナー回線をつかむと、つかみっぱなしになるケースがある。強制的にパートナー回線から楽天回線に切り替える方法は、あるのだろうか?
意図的にパートナー回線をつかまないようにするのは難しいが、今つかんでいる電波をいったん放すことは可能だ。以下の操作を試していただきたい。
- モバイルデータを「OFF」にして、再度「ON」にする
- 機内モードを「OFF」にして、再度「ON」にする
- 電源を「OFF」にして、再度「ON」にする
上述の操作をおこなえば、今つかんでいる回線をいったん放す。楽天回線が使えそうなら、楽天回線を掴みなおすだろう。
なお、iPhone11以前の機種は、回線の自動切替機能を利用できないようだ。よって、iPhone11以前の機種は、基本的に上述の方法で回線を切り替える必要がある。
まとめ:楽天モバイルの回線エリアなのにつながらない原因と対処法
さいごに、本稿のおさらいをしておこう。
楽天回線エリアなのに、なぜつながらないことがあるのか?
障害物の影響で電波が届いていない、通信障害が発生している、アクセスが集中しているなどの理由が考えられ、原因に合わせた対処法がある。詳しくはこちらをご覧いただきたい。
楽天回線エリアなのにパートナー回線になる場合はどうする?
とくに気にしなくて大丈夫だ。現行の「Rakuten最強プラン」では、パートナー回線エリアでも原則的に高速データ通信を無制限で利用できる。詳しくはこちらをご覧いただきたい。